「わが子の学力を伸ばしたい。そして、希望の学校へ行かせたい!」そう願う親は多い。わが子の学力を伸ばすには、どうしたらよいのか。
そのための秘訣を17紹介する。どれもプロの教師の目から見て、自信をもってお勧めできる秘訣であり、方法である。
長女は、この方法で中学校では学年1位を守り通した。ちなみに、長女は、いわゆる学習塾へ行ったことは一度もない。当時の習い事は、①小1から祖母に学んでいる書道、②幼稚園から習っているエレクトーン ③小5の9月から習っている少林寺拳法 の三つだけであった。しかも、野球部のメンバーとして3年間一生懸命活動していた。
「学力を伸ばす17の秘訣(方法)」(文責 泉河潤一)
■第一に「自分で学ぶ習慣が身に付いている」ことが挙げられる。
いわゆる家庭学習の習慣である。わが子の場合、ほとんど毎朝4時起きで(3:55に目覚まし時計が鳴る)、学習している。これは、テスト期間2週間前になって入る特別な体制ではなくて、普段がそうなのである。
朝食前の頭の働く時間帯に、2時間30分程の学習になろう。
■第二に「学習の計画性」が挙げられる。
「いつまでに、どの教科の学習を、どのテキストを使って(つまりどのように)学習するか」を自分で計画し、ほぼその通りに実行しているのである。つまり、家庭学習のマネジメント力である。
この力は一朝一夕に身に付くものではない。わが子に付いて言えば、チャレンジの教材(国語・算数・理科・社会・英語・作文)を、幼稚園から毎月毎月やる中で身につけていったものである。幼稚園については妻が付いていたし、小学生になってからは私が父と子塾で、1週間ごとに点検していた。今週のいつにどの教科のどのページを学習するかを決めさせ、次の父と子塾で点検していた。さすがに、小6になったら(小5の後半)、わが子にまかせた。わが子は、自分で「いつまでに、どの教科の学習を、どのテキストを使って(つまりどのように)学習するか」という「学習の計画性」をすでに小学校高学年段階で身につけていたのである。
■第三に、すぐれた教材である。
わが子は、ベネッセのチャレンジ教材に加えて市販のテキストを使っているが、このテキストの選択は重要である。
これらのテキストをやりきっている。
すぐれた教材に加えて、中学校の入学祝いに買い与えた電子辞書(カシオ製)、教科書にマッチした英語CD教材などももっている。それらは、フルに活用されている。つまり、電子辞書・iPad・パソコンなどの学習を助けるツールの類いの有効な活用である。
■第四に、親のサポートである。
わが子は、勉強でわからないことがあると、妻に教えてもらっている。妻でも手に負えないと、私に来る。ほとんど自分で学習してはいるが、わからないことを教えてくれる親のサポートがあるということは、心強いはずだ。
■第五に、栄養バランスのとれた食事が挙げられる。
これは、杏林予防医学研究所所長で、王貞治選手をはじめ多くのスポーツ選手の体質改善を手がけてきた山田豊文氏の「ま(豆類)、ご(ゴマ・種実類)、わ(わかめ・海藻類)、や(野菜=緑黄色野菜)、さ(魚類=青魚)、し(しいたけ・きのこ類)、い(いも類)」食を基本にしている。わが子は、「まごに(肉類)わやさしい」食と言っていて、かなり肉が好きなのだが。
スポーツをするばかりでなく、頭をよくするには食事がキーポイントになる。これは、脳細胞をつくるという意味よりも、落ち着いて集中して学習するうえで大切である。カップラーメン、ハンバーガーなどのジャンクフード、スポーツドリンクなどによる砂糖漬けの体では、がんばりは効かないのである。親に毎日のように、「勉強しなさい。」と言われても、一向に勉強する気が起きないのである。親はそんなことを言う代わりに、食事を改善する方が万倍も効果があると思う。
■第六に、勉強ばかりに偏らないバランスのとれた生活が挙げられる。
わが子は、野球部の部活動もがんばっている。ウイークディはもちろん、先週の日曜日も部活動だったし、今週の土曜日も部活動である。おまけに、週2回火曜日と金曜日の7時過ぎから9時まで少林寺拳法である。
筋肉を使い汗をかく運動をすることは、ストレスの解消になり、ほどよい気分転換になる。「この少林寺拳法や習字、エレクトーンの習い事にかける時間を、国語、数学、理科、社会、英語の学習に振り向けたら、もっとよい」ということには、決してならない。こちらはこちらでねらいがあり、大切な学習であるし、ここでの学習がストレス解消になっているはずだからである。
SONYCDプレイヤーやアイボ(ロボット)の開発に携わった天外 伺朗氏が、人見ルミさんとの対談(justCD)の中で紹介していた次のエピソードがある。高校3年の時、ボランティアのコンサート開催を目指してがんばっていたが、進路指導担当教師からストップがかかった。「お前ら、もうすぐ大学受験なのになにやってんだ!」と。その教師の言うことを聞いてコンサートに向けた練習をやめた仲間は全員大学に落ち、それにもめげずにコンサートの練習に励んだ仲間は全員大学に合格した。つまり、勉強一本にしぼればよいというわけではないのである。人の役に立つ活動を平行してやっていた方が、見えない大きな力のサポートを受けられるのである。その方が幸運の女神に好かれるとも言えるが、コンサートに向けた活動がストレス解消・勉強の息抜きとなり、かえって学習への集中力を生み出したとも言える。
■第七に、お互いを刺激し合う友達の存在である。
仲のよい友達と、良い意味でライバル意識をもち、情報を交換し合っている。テストに出る可能性が高いところの分析など、隣のクラスの友達とお互いに情報をやりとりしている。
これが「勉強なんてどうでもいいさ。遊ぼうぜ。」というイソップ村のキリギリス君のような友達だと、そちらに引っ張られることになる。案外、刺激し合う友達の存在は大きいのだ。
■第八に、勉強を邪魔するテレビやビデオ、DSなどのゲーム機の類いがほとんどないことが挙げられる。
誘惑が多ければ、学習に集中したくてもしにくいわけだ。
私は、DS自体を買い与えていない。テレビは本当に好きな番組だけ、本人が選んでみている。読書好きに育てたので、アキコはテレビよりも本である。
「いつまでもテレビを見ていない(DSをしていない)で宿題しなさい。」と、多くの親はわが子に注意しているらしいが、そもそもDSなんかシングルエイジの間は与えるべきではないと、私は考え実行してきた。
わが子は、テレビも見るが、録画した「家政婦のミタ」を見ている際、ドラマが佳境に入っているのに、勉強の時間になったからとテレビを見るのをやめ、自分で部屋に行き勉強していた。この意志の強さには、驚いた。
■第九に、「家の雰囲気があたたかい」ということが挙げられる。
これは、落ち着いて学習に集中するためには必須である。逆に、夫婦げんかや兄弟げんかが多く落ち着いて家にいられない環境では、学習への集中力は大きく減退する。
■第十に、読み聞かせで、読書好きにしたことである。
これも大きい。本当に勉強しようと思ったら、学校の勉強だけではダメで、その道のプロから学ぶ必要がある。その道のプロから実際に教わることは時間的にも、費用の面からも容易でない。だが、その道のプロが書いた本を読むことなら、比較的容易だ。わが子は、よりよい勉強法も含めて、新しい情報を本を通して仕入れている。
「何かいい本ない?」
これが、わが子と私との間で時おり交わされる会話である。
また、わが子はこの間出たばかりの「ガラスの仮面」を買って読んでいたが、読書はストレス解消にもなっている。
■第十一に、父と子塾で、2007年2月11日の今から5年前つまりわが子が小2のときに、暗唱の最高段位7段をクリアーさせたことなどである。
つまり、名文の暗唱を徹底してやらせたことである。暗唱は、頭自体をよくすると言われている。私はそれを信じて徹底してやらせた。これがわが子の頭自体をよくしたと考えているし、根気も鍛えたと思う。
■第十二に、わが家の教育方針で「かしこく、強く、あたたかく」と掲げ、頭をよくすることを大切に思ってきたこと。言い換えれば、親が子どもの学力に関心を払ってきたことである。
学習であれ、スポーツであれ、問題行動であれ、子どもの行動の大きな動機に、「親の注目を得たい」「親に認められたい」というものがある。この場合で言えば、子どもが学力を高めようとする理由に、「親の注目を得たいから」「親に認められたいから」というのは、かなり大きな位置を占めることになる。
つまり、親が学力に関心をもっていると、親に「注目されたい」「親に認められたい」と願う子どもは、そのために学力を高めようと思うわけである。
「親を喜ばせたいから学ぶ」
これは、確かに真実である。親子が信頼関係で結ばれている場合は。
■第十三に、わが子が目標をもったことである。
わが子は、本気で1位をねらっていた。本当の目標とは、「将来○○になりたい」からその夢を実現するためにという志をもつこと。それこそが一番大きな動機付けになるだろう。
しかし、中学1年の子供が、「将来○○になりたいから」とか志をもち、それを動機にして勉学に励むことは、理想だろうが、実際には難しい。将来なりたい職業などは、まだ流動的で明確でない場合が少なくないからだ。私など、高校2年であった(志をもったあとの勉強意欲はとても強かったが)。
とりあえず、志までいかなくとも、目標をもつことは、学力向上の大きな力となる。
ちなみに、目標をもって粘り強くその達成に向けてがんばり抜くという資質は、わが子の場合、マラソン大会に向けた自主練習でも、培われたと判断している。(※ わが子は、2ヶ月間余りも5時20分に起きて、親友のAさんと二人で練習を続けていた。)
■第十四に、お手伝いをずっとさせてきたこと。
わが子には、風呂掃除、米とぎ、トイレ掃除、台ふきなどを現在しているが、米とぎなど小5(4かも)からずっとやらせてきた。このお手伝いが段取り力や根気をつくったと考えている。
お手伝いと学力は関係がないと思われるかも知れないがそうではない。東京都が今から30年以上も前に、知能指数が高くて、オール1に近い子とオール5に近い子を比べた調査をしたことがある。両者には、二つの点で大きな違いが見られた。それは、「オール1に近い子は、テレビの視聴時間が長くお手伝いをしていないのに対して、オール5に近い子は、テレビの視聴時間が短くお手伝いをしている」というものだった。(出典はちょっと思い出せない。現在なら許されない研究ではあろう。)
お手伝いをすることは、見えない学力と言って、見える学力を高めるためにも、大切なポイントなのである。(だからというわけではないが、わが家は宿題を理由にお手伝いをしないことは、絶対に許さなかった。)
■第十五に、家庭の学ぶ雰囲気が挙げられる。
家庭に学ぶ空気というか、学ぶことをよしとし、それが自然であるという雰囲気である。別の言い方をすれば、親自身が日々学んでいて、それを楽しんでいることである。そうした雰囲気の中で育つ子は、自然と学ぶようになるのである。これをモデリングというが、平たく言えば、「親の背中を見て育つ」ということである。
逆に、親自身がテレビ漬け、パチンコ漬け……であれば、子どももそのようになっていく可能性が高い。
私は日々学んでいる。
■第十六に、よい教師につくことである。
「3年練習するよりも、3年かけてよい教師を探した方がよい」という格言があるくらい、実力ある教師につくことは重要だ。よい教師は、上手な教え方をするばかりでなく、第一の家庭学習の習慣の指導から、第二の家庭学習のマネジメント、第三の優れた教材の活用以下、すべてのレベルアップも図ってくれるからだ。そういう意味でも、もっとも重要な秘訣だと言えよう。だが、学校においては教師を選べないことも事実だ。だから、親がよい家庭教師になるのが一番よい。が、容易ではない。
■第十七は最大の秘訣ですが、秘密です。
ここまで書いてきて、まだ秘訣、それも最大の秘訣があることに気が付いた。これは、泉河潤一の講演会で質問されればお答えしよう。
こう書いたら、友人が「それは、いい学習塾に通わせることだろ」と言ってきた。確かにこれなら、第一の家庭学習の習慣の指導から、第二の家庭学習のマネジメント、第三の優れた教材の活用〜第十六よい教師につくことまでかなりのことをカバーできる。言いかえれば、すでに書いてきたことの複合体と言える。正解は、これ以外である。せっかく自分の考えを伝えてくれた友人には、十七番目の秘訣を教えた。そしてら、その友人は「なるほど!」と納得していた。
■「子どもの学力を伸ばす秘訣十七」の要点
①「自分で学ぶ習慣(家庭学習の習慣)が身に付いている」こと
②「学習の計画性」言いかえれば、家庭学習のマネジメント力があること
③すぐれた教材や学習ツールの活用
④親のサポート(わからないところを教えてあげるなど)
⑤栄養バランスのとれた食事
⑥勉強ばかりに偏らないバランスのとれた生活(よく遊びよく学べ)
⑦お互いを刺激し合う友達
⑧勉強を邪魔するテレビやビデオ、DSなどのゲーム機の類いがほとんどないこと
⑨「家の雰囲気があたたかい」ということ(夫婦げんかや兄弟げんかがほとんどない)
⑩読み聞かせで、読書好きにすること
⑪名文の暗唱を徹底してやらせること
⑫子どもの学力を高くすることに親が関心をもち、大切に思うこと
⑬わが子に目標をもたせること(○になりたい! ○学校へ行きたい! ○番以内に入りたい!……)
⑭お手伝いをさせること
⑮家庭に学ぶ雰囲気があること
⑯よい教師につくこと
⑰最大の秘訣なのだが秘密(子育て講演会で質問されれば答えます)
はじめに書いたように、長女は英語塾にも、いわゆる公文などの学習塾にも行っていない。家庭教師を付けたことも、もちろんない。しかし、学力は高い。それには、このような条件というか背景があった。それを17の秘訣としてまとめてみた。