読み始める前に
わが子がなんとなくいつもと違って荒れている、落ち着きがない、あるいは沈んでいる……。
そんなことってありませんか?
それは、ケアを必要としている“心のサイン”かもしれません。
今回は、学校で「嫌い」と言われて傷ついたわが子へのパパの対応です。
娘が学校で「嫌い」と言われた日
― グッド&ニューが救った心の傷 ―
長女アキコ(小1)、次女クニコ(2歳)、母、父(私)、祖母(70歳)
食卓の会話「グッド&ニュー」から見えてきた心の痛み
午後7時過ぎ、いつものようにテレビを消し、親子4人で夕食を始めました。
鯖のみそ焼きなどを少し食べたあと、この春、小学校に入学したばかりの長女アキコに、
「何かグッドあった?」
と声をかけました。わが家の習慣、「グッド&ニュー」の時間です。
するとアキコが、ぽつりぽつりと話し始めました。
「○ちゃんやだ。アキコの悪口を言うんだもん。」
「アキコのこと嫌いだって。」
「給食の時、こそこそ話をしてるんだよ。蹴ってきたりしてやだ。アキコのこと嫌いだって聞こえたんだよ。」
話を聞くうちに、「○ちゃん」は以前アキコが、
「○ちゃんて、よく“チンチン”って言うんだよ。変なんだよ」
と話していた子だとわかりました。
ママは、
「嫌いだなんて言われて、つらかったのね。その子は、もう少ししたら、別の子を嫌いだって言い始めるかもしれないよ」
と声をかけ、私はこう言いました。
「嫌いだなんて言われて、悲しかったよね。でも、パパもママもアキコのこと、大好きだよ。」
表現できることの大切さ
ふり返ってみれば、その日、私が7時に帰宅したときから、アキコの様子はどこかおかしかったのです。
いつもより勢いよく膝に乗ってきたり、妹のクニコへの言葉遣いが荒かったり。
○ちゃんの話を聞く前後もその状態は続いていて、思わず注意してしまったほどでした。
でも、原因がわかっていたからこそ、気持ちをしっかり受け止めて、「パパもママもアキコのこと大好きだよ」と伝えたことで、アキコの気持ちは少しずつ落ち着いていきました。
その後は、いつものように室内で一緒に野球をしたり、絵本を読んだりして過ごしました。
家族の対話が心をほどいていく
家族で一緒にお風呂に入ったあと、ママが言いました。
「口に出して表に出てくるだけいいわね。アキコは、嫌なことを自分の中にため込むタイプだから。」
私はうなずきながら、
「たしかに、少し様子がおかしかった。注意するより、まずは聞いてあげないとね」
と返しました。
そのやり取りを聞いていたアキコが、
「アキコ、変な子なの?」
と聞いてきたので、
「違うよ。アキコはいい子だよ」
「いやだったことを言ってくれて、パパはうれしかったよ」
と伝えました。
するとアキコがこう言いました。
「今度、気持ちのグッド&ニューをやってもいい? いやだったこと、うれしかったことも言うの」
思わずママと顔を見合わせて、「いいよ」と答えました。
グッド&ニューがもたらす癒し
グッド&ニューをやっていて、本当によかったと心から思いました。
もしこれが、テレビのニュースを見ながらただ一緒に夕食をとるだけだったとしたら、アキコは気持ちを吐き出せず、荒れたまま何度か叱られ、もやもやしたまま眠りについたかもしれません。
癒され、励まされることと、そうでないこと。
その違いは、まさに天地の差だと感じました。
今、振り返ってみて
わが家では、夕食時にはテレビを消し、家族で会話を楽しむことを大切にしていました。
そして「グッド&ニュー」として、1日の“よかったこと(グッド)”、“ニュースとなるような変わったこと(ニュー)”をそれぞれ紹介し合う習慣を作っていました。
つまり、家族団らん(会話)の“仕組み”があったのです。
この出来事を機に、「グッド&ニュー」の中で、“いやだったこと”も話せるように、少し工夫を加えるようになりました。
家庭で子どもが荒れるときには、必ず何かしらの原因があります。
その一つが、学校でのトラブルです。
親は、耳を澄まして、目を凝らして、子どもの様子に気づいていく必要があります。
今回のように、荒れた原因がわかれば、それをケアし、寄り添い、支えることができるのです。
(2025/07/05)
*「あったかい家族日記」は、長女アキコ(2025年7月現在27歳・既婚)と次女クニコ(23歳・公認会計士)の成長を、パパの視点で約15年間にわたり綴った実録子育てエッセイです。
*二人が幼児だった頃から大学入学、そして結婚前後までの家族の日々を記録し、累計アクセス数は400万を超えました。
*七田チャイルドアカデミー校長・七田眞氏にも「子育てに役立つブログ」として推薦された本連載は、So-netブログ閉鎖(2025年3月)を機に、「記録」と「今の視点」を重ね合わせて再編集した〈日々の記録に、“今”を添えた子育てエッセイ〉として、note で再連載しています。
*この文章は、2005年5月25日にSo-netブログで公開された『娘が学校で友達に嫌いだと言われた!』に、「今、振り返ってみて」を加筆した再構成エディションです。