《読み始める前に》
夜遅く、子どもが泣き疲れて眠っている。
けれど、体の異変は消えていない。
「様子を見るか」「今すぐ動くか」
親として、最も迷う瞬間があります。
これは、実母の一言で
次女クニコの命が救われた、忘れられない出来事です。
パパの子育て奮戦記:第66号
長女アキコ(5歳)、次女クニコ(1歳)、ママ、パパ(私)、祖母(67歳)
1歳の頃から抱えていた不安
3歳になったクニコですが、
1歳の頃に「脱腸(そけいヘルニア)」になったことがありました。
腸が下がり、下腹部がぽこっとふくらむ。
そんな状態が、時々見られていました。
医師に診てもらうと、
「成長とともに、自然に隙間が閉じ、腸は下がらなくなる。」
とのことでした。
それならばと、
そのまま成長を待つことにしていました。
しかし、大泣きしたときなど、
腹部に力が入るのか、
腸が下がる状態がたびたび生じるようになりました。
そのたびに、ふくらんだ部分をそっと押すと、
元に戻っていたのです。
戻らない異変と、泣き続ける娘
ある夜のことでした。
いつものように、腸が下がってしまいました。
ところが、その日は違いました。
ふくらんだ部分を押しても、
なかなか元に戻らないのです。
クニコは痛いのか、
泣き通しでした。
30分以上は泣き続けたでしょうか。
やがて、疲れ切って、スヤスヤと眠ってしまいました。
ここで、問題が残ります。
とりあえずクニコの大泣きはやみ、スヤスヤと眠っています。
しかし、腸は下がったまま。
時計を見ると、すでに夜11時を回っています。
深夜です。
さて、どうするか。
迷った末に、母へかけた一本の電話
育児に限らず、
困ったとき、迷ったとき、
私は実母に電話をします。
「もう遅い時間だし、迷惑かもしれないな」
そう思いながらも、
状況を説明し、アドバイスを求めました。
返ってきた言葉は、
即答でした。
「すぐに救急車を呼びなさい!」
一瞬、ためらいました。
この時間に救急車を呼ぶなんて……
近所の目も気になる……。
それでも、実母の言葉を信じて、
おそるおそる救急車を呼びました。
「どうして、もっと早く連れてこなかった!」
数分後、
救急車がアパートの駐車場に到着しました。
妻とクニコが乗り込み、
私は当時5歳の長女アキコとともに、
アパートで連絡を待ちました。
しばらくして、妻から電話がありました。
医師はクニコを診るなり、
こう叱責したそうです。
「どうして、もっと早く連れてこなかった!」
医師は大変苦労しながら、
クニコの腸を元に戻してくれました。
後から知った、背筋の凍る事実
後日、『家庭の医学』で該当箇所を読み、
私は背筋が寒くなりました。
腸が下がったまま戻らない場合、
その部分に血液がいかなくなり、
命を落とすことすらある
と書かれていたのです。
もしあの夜、
「もう泣きやんだし」
「夜遅いから(実母は寝ているから迷惑かも云々)、朝まで様子を見よう」
そう判断していたら……。
もし、実母に電話をしていなかったら……。
クニコは、今生きていない可能性があった!
それもかなり高い確率で。
学んだこと
この出来事から、私は強く学びました。
アドバイスを受けることの大切さ。
そして、
子どもの命がかかっているときに、
体面(この時間帯にアパートに救急車を呼ぶなんて云々)など、かまっていられない
ということ。
今から、およそ2年前の出来事です。
(2005.8.13記)
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今、振り返ってみて
2025年3月、次女は大学を卒業し、
4月から大手監査法人で社会人として歩み始めました。
翌日に後回しにせず深夜、実母にアドバイスを求める判断をして本当によかったです。
この後、<成長とともに、自然に隙間が閉じ、腸は下がらなくなる>のを待つのではなく、
手術で隙間を閉じました。結局、私が幼い頃と同じです。

手術後のお見舞い 長女と私
なぜ、母は即答できたのか
あのとき、実母は迷いませんでした。
「すぐに救急車を呼びなさい!」
なぜ、あんなにも即答できたのか。
後になって、その理由を知りました。
それは、
母自身が、悲しい後悔を経験していたからでした。
以前の記事
「長男の死を前にして、親ができること――最愛の長男を亡くした親の悲しみ」
にも書きましたが、
私の兄は、高校受験のプレッシャーの中で体調を崩し、
十二指腸潰瘍が原因で腸に穴が開き、激痛で倒れました。
そのとき、
母は救急車を呼ぶことをためらい、
タクシーで病院に向かったのです。
結果として、処置が遅れ、
母は悲しい後悔を経験することになりました。
だからこそ――
母は学んでいたのです。
「命が関わるときは、体面も遠慮もしてはならない」
その学びが、
次女の命を救いました。
直接経験から学ぶか、他人の経験から学ぶか
人は、
直接経験から学ぶことが一番深く身につきます。
けれどそれは、
時に、あまりにも大きな痛みを伴います。
だからこそ私は思います。
賢明な親は、
他人の経験から学ぶことも選べるのだと。
・自分より経験のある人に相談する
・専門家の判断を仰ぐ
・本や記録から学ぶ
それは、弱さではありません。
むしろ、
わが子を守るための、親としての強さです。
子育ては、一人ではできない
次女が今、元気に生きている。
それは、
本人だけの力ではありません。
・即断した祖母
・適切に処置してくれた医師
・相談することを選んだ私たち夫婦
多くの人の支えが重なって、
一つの命は守られました。
子育ては、
一人で背負うものではありません。
チームで支えるものなのだと、
この出来事は教えてくれました。
(2026.1.16 記)
📝 自分に問いかけてみる時間
少し、立ち止まって考えてみてください。
-
遠慮や体面を気にして、
子どものための行動を控えていませんか? -
「これくらいなら大丈夫」と、
自分だけの判断で済ませていませんか?
特に、
命や尊厳に関わること
(事故、いじめ、挫折…)では、
親は、“賢明”かつ“強く”支える必要があります。
そして、“賢明”さは、今の自分に足りなくても、相談することで手に入れることができます。
📝 簡単なワーク
①「相談先リスト」を心の中に持つ
いざという時、
すぐに相談できる人は誰でしょうか。
-
配偶者
-
実親・義親
-
信頼できる友人
- 教師・医師・専門家
名前を思い浮かべるだけで構いません。
②「迷ったら相談する」と決めておく
判断に迷ったら、
一人で抱え込まない。
それだけを、
今日、心の中で決めてみてください。
その決意が、
いつか、わが子を守る力になります。
***パパママとして成長したいあなたへ──フォローどうぞ***
「あったかい家族日記」は、長女アキコ(2025年8月現在27歳・既婚)と次女クニコ(23歳・公認会計士)の成長を、パパの視点で約20年間にわたり綴った実録子育てエッセイです。
*二人が幼児だった頃から大学入学、そして結婚前後までの家族の日々を記録し、累計アクセス数は400万を超えました。
*七田チャイルドアカデミー校長・七田眞氏にも「子育てに役立つブログ」として推薦された本連載は、So-netブログ閉鎖(2025年3月)を機に、「記録」と「今の視点」を重ね合わせて再編集した〈日々の記録に、“今”を添えた子育てエッセイ〉として、noteで再連載しています。
*この文章は、2005年8月13日にSo-netブログで公開された
『実母のアドバイスで次女の命は助かった!』に、
「今、振り返ってみて」を加筆した再構成エディションです。

