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彼女との結婚を決めた理由──「きちんとした人だ」と、心が動いた瞬間

《読み始める前に》

結婚を決めた理由を聞かれると、
「価値観が合ったから」「一緒にいて楽しかったから」
そんな言葉でまとめてしまいがちです。

でも実は、もっとささやかな出来事が、
「結婚」を決めていることもあります。

これは、
私が彼女との結婚を決めた、
とても小さくて、でも忘れられない出来事の話です。

パパの子育て奮戦記:第69号
長女アキコ(7歳)、次女クニコ(3歳)、ママ、パパ(私)、祖母(69歳)


「この人は、きちんとしている人だ」

私が彼女に惹かれ、
結婚を決めた大きな理由の一つは、
彼女がとても「きちんとしている人」だと感じたからです。

よく、しつけがなされている。
そんな印象を、自然に持ちました。

それを強く感じたのは、
確か、3回目くらいのデートのときでした。

ダムの公園で、空き缶をどうするか

私たちは、隣村にあるダムに隣接した公園へ出かけました。
天気もよく、のどが渇いたので、
近くの自動販売機で冷えた飲み物を買いました。

おいしく飲み終えたあと、
当然あるはずの空き缶用のゴミ箱が見当たりません。

普通なら、自動販売機の横にあるはずなのに……。

どうしようかと困っていると、
彼女はごく自然に、空き缶を手に取りました。

しかも、自分の分だけでなく、
私の分も一緒に。

そして、車の方へ持っていったのです。

「持ち帰る」という判断を、
何の迷いもなく、当たり前のように。

正直に言うと、
私はそのとき、

「自動販売機のわきにでも、並べて置いておこうかな」

そんなことを、少し考えていました。

でも、彼女のその行動を見た瞬間、
私の心は、ぐらぐらっと揺れました。

座敷で、靴をそろえるということ

そのあと、市内に戻り、
食事をするために、ある料理屋に入りました。

座敷に上がるとき、
彼女はごく自然に、靴をそろえました。

誰に見せるでもなく、
特別な動作でもなく、
本当に自然に。

その姿を見て、私は思いました。

「この人は、きちんとしつけられて育った人なんだな」

心がまた、大きく揺れました。

料理を、自然に先に回してくれたこと

しばらくして、注文した料理が運ばれてきました。
若いウエイトレスさんが持ってきてくれました。

私たちは同じ料理を頼んでいたのですが、
そのウエイトレスさんは、
彼女の方から先に料理を置いていきました。

すると彼女は、
運ばれてきた料理を、すぐに私の方へ向けて回してくれたのです。

このときも、
特別な言葉があったわけではありません。

でも、その一瞬の気遣いに、
私はまた、心を強く動かされました。

「躾」という字が教えてくれること

彼女は、
すごい美人でも、
すごくかわいいタイプでもありませんでした。

でも、
しつけが身についていて、
育ちのよさを感じる。

私は、そこに強く惹かれました。

「身が美しい」と書いて、「躾(しつけ)」と読みます。

日本語は、本当によくできていると思います。

なぜ躾が大切なのか。
その答えが、この漢字に込められているように感じます。

躾の身についた人は、
行動が美しく、
周りの人にとって心地よい。

投げ捨てられた空き缶や、
雑に脱がれた靴が、
決して美しく見えないのと同じです。

そして何より、
そこにある「相手を思いやる心」が、美しいのだと思います。

わが家の「家族憲法」にあるもの

私たちが二人で作った「家族憲法」には、
「三 めざす子ども」という項目があります。

その四番目に、
「躾の身に付いた子」
という一文を入れています。

具体的には、

・靴をそろえる
・後片付けをする
・人の物をとらない
・ぶたない
・「ありがとう」「ごめんなさい」が言える

そんなことを、大切にしたいと考えて入れました。
(※ 思いやりがある子、あいさつがきちんとできる子 も入れてあります)

躾の身についた、
美しい子に育ってほしい。

そう、心から思います。

娘に話したこと、そして母への感謝

つい最近、
長女アキコが、妻にこんなふうに叱られていました。

「アキコ、脱いだ靴はそろえなさい。
何度言ったらわかるの?」

そこで私は、
こんな話をしました。

「アキコな、
どうしてパパがママと結婚したかというとね……」

そう言って、
この“靴をそろえた話”を聞かせました。

「だからな、
靴をそろえる女の子は、きれいなんだよ。
男の子にモテるよ」

アキコは、笑いながら聞いていました。

ちなみに私はというと、
今でも、靴のことで注意されることがあります。

どうやら、
わが母は、躾そのものには
完全には成功しなかったようです。
(これ、責任転換でしょうか)

でも、
躾の大切さや、
それをよしとする感性を育てることには、
成功してくれたのだと思っています。

わが母にも感謝。
そして、義母にも感謝です。

(2005年8月17日)

************************

今、振り返ってみて

不思議なことに、
自販機で飲んだジュースのこと、
その空き缶をどうしたかという、ほんの小さな場面のこと。

料理屋で靴をそろえた彼女の後ろ姿。
料理が運ばれてきたとき、何気なく向きを変えてくれた仕草。

こうして読み返してみると、
細部まで、はっきりと思い出せるのです。

きっとそれは、
「心が動いた瞬間」だったからなのでしょう。

「美人」の正体は、どこにあるのか

当時、担任していた小学4年生のクラスで、
こんなやりとりがありました。

読んだばかりの本にあった
「美人と言っても、面の皮一枚。性格が一番大事だよ」
という一節を紹介したときのことです。

ある女の子が、はっきりと言いました。

「先生、それ違う! やっぱり顔が一番!」

私は思わず、
「そうか、やっぱり顔か」
と返して、その場は終わりました。

でも、今ならこう思います。

「美人」の定義は、
実は一つではないのだと。

努力で育てられる『美人』があるということ

たとえば――

  • 顔美人

  • 声美人

  • 服装(ファッション)美人

  • 言葉美人

  • 仕草美人

  • 性格美人

  • 文字(手紙)美人

  • 健康美人…

こうして並べてみると、
生まれつきで決まってしまうものよりも、

努力次第で育むことのできる「美人」の方が、ずっと多いことに気づきます。

そして、
それらの多くは「躾(しつけ)」と深くつながっています。

靴をそろえること。
空き缶を持ち帰ること。
料理を相手に向けて差し出すこと。

どれも、派手ではありません。
でも、その一つひとつに
「相手を思う気持ち」がにじんでいます。

だからこそ、
人はそこに惹かれるのだと思います。

躾は、「好かれる力」を育てる

躾の身についた子は、
異性にモテます。

それだけではありません。
年齢や立場を超えて、
周囲の人から自然と好かれます。

そして、周囲の人に好かれた方が、幸せになります。

なぜなら、人は――
好感を持った相手のためには、進んで力を貸したくなる
そんな生き物だからです。

顔立ちは変えられなくても、
言葉遣いや仕草、思いやりの心は育てることができます。

そう考えると、
躾には、大きな希望があります。

親が贈れる、最高の言葉

もし、いつか子どもに
こんなふうに言われたら――

「なんで、美人に産んでくれなかったの!」

そのとき、
こう答えてあげられたらいいなと思うのです。

「美人に育てたよ。
言葉美人、仕草美人、性格美人にね。
だからきっと、
たくさんの人に好かれるよ。」

それは、
一生ものの贈り物になるはずです。

📝 自分に問いかけてみる時間

少し、立ち止まって考えてみてください。

  • 躾の本当の価値を、どこに置いていますか?

  • わが子が将来、
    「周囲の人に好かれる力」を身につけられるような関わりをしていますか?

実は、
親自身もよく知っているはずです。

あいさつをしてくれる子。
「ありがとう」と言ってくれる子。

そういう子と一緒にいる方が、
ずっと心地いいということを。

📝 簡単なワーク

① すでに身についている「躾」を見つける

あいさつ、食事の仕方、身だしなみ、
「ありがとう」「ごめんなさい」が言えること。

できているところを、
まず一つ、言葉にして褒めてみましょう。

② 親自身のお手本を一つ決める

靴をそろえる。
食後に「ごちそうさま」と言う。
感謝を言葉にする。

完璧でなくて構いません。
続けられる一つを決めることが大切です。

躾は、
言葉で教えるものではなく、
姿で伝わるものだからです。
(2026年1月22日記す)

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「あったかい家族日記」は、長女アキコ(2025年8月現在27歳・既婚)と
次女クニコ(23歳・公認会計士)の成長を、
パパの視点で約20年間にわたり綴った実録子育てエッセイです。
*二人が幼児だった頃から大学入学、そして結婚前後までの家族の日々を記録し、
累計アクセス数は400万を超えました。
*七田チャイルドアカデミー校長・七田眞氏にも
「子育てに役立つブログ」として推薦された本連載は、
So-netブログ閉鎖(2025年3月)を機に、
「記録」と「今の視点」を重ね合わせて再編集した
〈日々の記録に、“今”を添えた子育てエッセイ〉として、noteで再連載しています。
*この文章は、2005年8月17日にSo-netブログで公開された
『彼女との結婚を決めた理由』に、
「今、振り返ってみて」を加筆した再構成エディションです。

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