子育てがうまくいくヒント © 2022 泉河潤一 All rights reserved.

「パパ、行ってらっしゃい」のチカラ──毎朝の玄関習慣がくれたもの

《読み始める前に》

もしこれから出勤するパートナーが一瞬で元気になる、とっておきの方法があったら、知りたくないですか?
それは、タイトルにある「行ってらっしゃい」という言葉がけです。そして、ハグです。
ママからすると、「えっそんなことで!?」と思われるようなら、ぜひ本文を最後まで読んでください。


パパの子育て奮戦記:第8号
長女アキコ(小1・6歳)、次女クニコ(2歳)、ママ、パパ(私)、祖母(70歳)


玄関で送り、玄関で迎えるという習慣

いつからだったか、わが家では、パパである私の出勤時と帰宅時に、ママと娘たちがそろって玄関に来るのが当たり前になっていました。

私が一番早く家を出て、一番遅く帰ることが多い中で、**「いってらっしゃい」「おかえりなさい」**をしっかりと交わすのは、パパの私にとって、そして私たち家族にとって大切な時間でした。


「そのまま生きて帰れるとは限らないから」

ある朝、玄関にママが来なかったことがありました。
「どうしたの?」と聞くと、「ちょっと料理が忙しくて」とか「おむつを替えようと思って」とのこと。

私は少し強く言ってしまいました。
「そんなことは後回し。まず、ちゃんと見送ってから。
そのまま生きて帰ってくるとは限らないのだから。」

本当に大切なことを、後回しにしてはいけない──そう思ったのです。


ハグとキスで、チカラをもらう朝

それ以来、ママと娘たちは、ほとんど欠かさず玄関に来てくれます。
出勤前には、家族みんなでハグをして、ほっぺたにキス。

それだけで元気が出ます。
時間にすればほんの数分。
でもこの時間が、私にとって、仕事に向かうエネルギーの源になっているのです。

この玄関のやりとりは、わが家の伝統
毎日続けることで、本当に元気をもらえています。
家族の絆を感じる一瞬です。


今、振り返ってみて

今思えば、あの玄関での「行ってらっしゃい!」の見送りは、ただの習慣ではなく、毎朝エネルギーをもらえる時間だったのだと実感します。
出勤前の一瞬のハグ、一言の声かけが、どれだけ心を支えてくれたか──。
「よし!今日も家族のためにがんばろう!」そう思えたのです。

専業主婦だったとはいえ、家事や子育てに忙しい中、毎朝見送ってくれた妻に感謝しています。

現在、私は定年退職し、自宅で発達に凸凹のあるお子さん向けの塾と、そのママ・パパ向けの子育て講座をオンラインで行っています。

今は立場が逆転して、妻が出勤、私が見送る側
毎朝、玄関まで出て、肩を軽く抱き、「行ってらっしゃい」と手を振って送り出す。
ほんの数秒のことですが、夫婦の絆を感じるかけがえのない一瞬です。

先日、同級会で女性の知人がこう話してくれました。
「夫は家にいるのに、私が出勤するとき、行ってらっしゃいも言わずにテレビを見てるの」
そこにあったのは、強い不満とさびしさ。
私は、その逆の立場を体験してきたからこそ、「見送ってもらうこと」の力を強く感じています。
だからこそ、今度は私の方からずっと続けているのです。

ちなみに、ほっぺにキスをしてくれるのは、子どもが小さかった頃までの「賞味期限つきの特権」でした(笑)。

子どもが大きくなると、部活などでこちらより早く家を出ることもあります。
そんな時は、「いってらっしゃい」は私から。
たとえ一言でも、そのやりとりの中に、子どもも家族の絆や安心感を感じているのだと思います。

今回の記事の中で「生きて帰ってくるとは限らない」という一節に、ドキッとされた方もいたかもしれません。
でも私自身、その言葉を、少しも大げさだとは思っていません。
心に残っているのは、アメリカの詩人ノーマ・コーネット・マレックが書いた詩『最後だとわかっていたなら』の一節です。

最後だとわかっていたなら
あなたがドアを出て行くのを見るのが
最後だとわかっていたなら
私はあなたを抱きしめてキスをして
そしてまた呼び寄せて抱きしめただろう(一部引用)

「当たり前」は、突然終わることだってあるのです。
この意味でも、「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」は、子どもが巣立った後も、ずっと夫婦で交わしています。


*「あったかい家族日記」は、長女アキコ(2025年7月現在27歳・既婚)と次女クニコ(23歳・公認会計士)の成長を、パパの視点で約20年間にわたり綴った実録子育てエッセイです。
*二人が幼児だった頃から大学入学、そして結婚前後までの家族の日々を記録し、累計アクセス数は400万を超えました。
*七田チャイルドアカデミー校長・七田眞氏にも「子育てに役立つブログ」として推薦された本連載は、So-netブログ閉鎖(2025年3月)を機に、「記録」と「今の視点」を重ね合わせて再編集した〈日々の記録に、“今”を添えた子育てエッセイ〉として、noteで再連載しています。
*この文章は、2005年5月31日にSo-netブログで公開された『出勤時と帰宅時の我が家の伝統』に、「今、振り返ってみて」を加筆した再構成エディションです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です