《読み始める前に》
子どもの作文には、親が思っている以上に、子どもの心がそのまま出ることがあります。
何をうれしいと思っているのか。
誰のどんな行動を、ちゃんと覚えているのか。
そして、何を「宝もの」だと感じているのか。
今回のきっかけは、ベネッセの作文コンクールでした。
テーマは「きみの たからものについて つたえよう」。
最初は、5000円の図書カードを目指して始まった作文指導でした。
でも、アキコが選んだ宝ものは、賞品よりもずっと大切なものでした。
パパの子育て奮戦記:第87号 長女アキコ(8歳)、次女クニコ(3歳)、ママ、パパ(私)、祖母(69歳)
お母さんは宝もの
9月3日(土)のことです。
娘の作文「お母さんは宝もの」をめぐる、我が家の小さな出来事です。
妻が私に言いました。
妻「お父さん、アキコ、ベネッセの作文コンクールがあるの。出すなら10日までに出さなきゃいけないんだけど、見てくれない?」
私「ふ〜ん、要項を見せてみろよ」
そう言って、私は要項を読みました。
※我が家では、なぜか作文などは私が指導することになっています。
目指すは、5000円の図書カード
要項には、こう書いてありました。
作文部門の賞品は、
大賞1名が電子辞書。
優秀賞10名が図書カード5000円。
私「う〜ん、5000円か。よし、5000円にチャレンジしよう!」
テーマは、
「きみの たからものについて つたえよう」
200字詰め原稿用紙1枚で書く、というものでした。
審査基準については、すでに作文をベネッセへ送ってしまったので記憶によりますが、三つほど基準があったと思います。
そのうち、1年生の作文では、特に三つ目の「1年生らしさ」が出ている作文を最も重視する、というようなことが書いてありました。
一つ目か二つ目には、たしか「宝ものにしたわけをくわしく書く」というようなことが書いてあったと思います。
私「なるほど、一番重視するのは1年生らしさか……」
私はそう思いました。
そして、アキコに言いました。
私「アキコ、ベネッセの作文コンクールに出そう。うまく書けると、5000円もらえるぞ」
するとアキコは、こう言いました。
アキコ「アキコ、天体望遠鏡の方がいい」
自由研究部門の大賞の賞品です。
私「まあ、その5000円に少し足して天体望遠鏡を買う手もあるよ。よし、やろう」
というわけで、取らぬ狸の皮算用かもしれませんが、5000円の図書カードを目指して、作文指導が始まりました。
アキコの宝ものは、何かな?
私はまず、アキコに聞きました。
私「アキコの宝ものは、何かな?」
アキコ「お母さん、お父さん、あーちゃん、妹……」
私「家族だね。じゃまず、お母さんは、どうして宝ものなの?」
アキコ「やさしくて、おいしいごはんを作ってくれるから」
私「なるほどね。じゃ、どんなところがやさしいの?」
アキコ「七田やチャレンジや宿題を見てくれるし……」
私「勉強を見てくれるんだね。それで……」
アキコ「夜ひとりでトイレに行くのが恐いと言うと、ついていってくれる」
私は心の中で思いました。
「1年生らしさはこれだな!」
私「ついていってくれる。それから?」
アキコ「う〜ん、ままごととかして遊んでくれる」
私「そりゃ優しいね」
私はまた思いました。
「ままごとか。これも1年生らしさだな!」
私「他にどんなことして遊んでくれるの?」
アキコ「お店屋さんごっことか、外に散歩に行くとか……」
私「お店屋さんごっこね」
そう言いながら、私はさっきからメモを取っていました。
フライドポテト、みそ汁、ハンバーグ
次に、私は聞きました。
私「じゃ、おいしいごはんって、どんなの?」
アキコ「フライドポテトとか……」
私「フライドポテトね」
私はメモをします。
アキコ「みそしるとか、野菜、ハンバーグ」
私「アキコはハンバーグやフライドポテト、大好きだもんね」
そうして聞き取っていくと、作文に入れたいことは、だいたい出そろいました。
私「よし、これで大体いいな」
私は自分のメモを見せながら言いました。
私「よし、今度は作文を書いてみるよ」
そして、メモなどを参考にしながら、アキコは下書きを書きました。
やっぱり、これでちょうど200字ぐらいです。
残念。
父のことは書けません。
少しアドバイスして修正させました。
その後、清書をさせました。
清書だけは、後で妻が指導してくれました。
次に、その作文を紹介します。
『おかあさんはたからもの』
わたしのたからものは、おかあさんです。
おかあさんは、しゅくだいやチャレンジなどのべんきょうをみてくれます。いっしょにままごとをしたり、おみせやさんごっこをしたりしてあそんでくれます。アキコのすきなフライドポテトやハンバーグをつくってくれます。とてもおいしいです。ねるまえにえ本をよんでくれます。よるはこわいので、いっしょにトイレについていってくれます。
だいすきなおかあさんが、たからものです。
優秀賞より、もう十分にうれしかった
妻は、この作文を見て感激していました。
その様子を見た私は、
「まっ、優秀賞に入らなくても、元が取れたか」
と、密かに思いました。
そして私自身も、
「家族が宝ものと言える娘に育った」
ということで、賞を取れなくても、十分満足することにしようと思いました。
このアキコの作文が素敵だなと思った人は、ぜひniceをお願いします。
(※ So-netブログでは、niceがnoteのスキに相当します)
これって、娘を利用しているか!?
(2005年9月12日記)
今、振り返ってみて
実は、この作文、残念ながら入選はしませんでした。
でも、本文にも書いたように、ママの満面の笑みが見られたので、十分すぎるくらい元は取れました。
笑い話のようですが、本当にそう思っています。
今あらためてこの作文を読み返してみると、気づくことがあります。
それは、親のどんな行動が、子どもにとって心地よく、ありがたいものとして映っているのかということです。
言い換えると、子どもに好かれるには、どんな関わり方をすればよいのか。
そのヒントが、この短い作文の中に詰まっているように感じます。
アキコが作文に書いていたのは、こんなことでした。
①しゅくだいやチャレンジなどのべんきょうをみてくれる
⇨ 家庭学習をそばで支えてくれること。
②いっしょにままごとをしたり、おみせやさんごっこをしたりしてあそんでくれる
⇨ 子どもがやりたい遊びに、ちゃんと付き合ってくれること。
③アキコのすきなフライドポテトやハンバーグをつくってくれる
⇨ 好きな料理を作ってくれること。
いわゆる「胃袋をつかまれる」というやつでしょうか。
④ねるまえにえ本をよんでくれる
⇨ 好きなことをしてくれること。
絵本の読み聞かせは、抱っこしながら読むことも多いので、スキンシップにもなります。
⑤よるはこわいので、いっしょにトイレについていってくれる
⇨ 怖い気持ちに寄り添ってくれること。
こうして見ると、子どもが喜ぶことは、ものすごく特別なことではないのだと思います。
勉強を見てくれる。
遊びに付き合ってくれる。
好きなものを作ってくれる。
絵本を読んでくれる。
怖いときに、そばにいてくれる。
気持ちに寄り添ってくれる。
どれも、日々の暮らしの中にある小さな関わりです。
子どもは、純粋です。
そして、ある意味ではとても素直です。
こういう小さなことをしてもらうだけで、ちゃんと喜んでくれる。
ちゃんと覚えていてくれる。
そして、「お母さんは宝もの」と書いてくれるのです。
もちろん、言うほど簡単ではありません。
この時期、妻はまだ専業主婦でした。
それでも、家事をして、子どもの勉強を見て、遊びにも付き合い、寝る前には絵本を読む。
そうした日々の関わりを続けるのは、決して楽なことではなかったと思います。
まして、共働きのママやパパにとって、この「普通のこと」を毎日続けるのは、なおさら大変なことだと思います。
それを当たり前のようにできるママは、やっぱりすごいなと思います。
そして実は、③の料理を除けば、私も同じようなことをしてきました。
パパだって、子どもの勉強を見ることはできます。
ままごとやお店屋さんごっこに付き合うこともできます。
絵本を読むこともできます。
夜のトイレについていくこともできます。
そうやって関わっていく中で、子どもは喜んでくれます。
そして、パパのこともちゃんと好きになってくれるのだと思います。
もちろん、仕事で疲れていて、一服したいときもあります。
でも不思議なことに、子どもと触れ合うと、エネルギーを使ったはずなのに、かえってこちらが充電されることがあります。
子どもには、そういう「魔法の力」があるのだと、私は思っています。
疲れたときこそ、少し休んだあとで、子どもと触れ合ってみる。
一緒に遊ぶ。
絵本を読む。
話を聞く。
そばにいる。
それだけで、親の方が癒やされることもあります。
子どもの「魔法」にかかってみる。
そんな時間も、なかなかいいものだと思います。
📝 自分に問いかけてみる時間
疲れているときは、ついこう思ってしまいます。
「今日はもう、子どもと触れ合う元気がない」
「少しひとりで休みたい」
「遊びに付き合う余裕なんてない」
もちろん、そういう日があってもいいと思います。
親だって人間ですから、疲れる日もあります。
でも、もうひとつの考え方もあります。
疲れているからこそ、子どもと少し関わってみる。
子どもと遊ぶことで、こちらがリフレッシュさせてもらう。
子どもには、不思議な「魔法の力」があります。
一緒に笑ったり、絵本を読んだり、話を聞いたり、少しだけ遊びに付き合ったりする。
それだけで、疲れていたはずのこちらの心が、ふっと軽くなることがあります。
子どもの魔法に、少しかかってみる。
そんな時間があってもいいのかもしれません。
そして、もうひとつ。
自分のどんな行動が、子どもに喜ばれているのだろう。
そんなふうに、時々振り返ってみるのもいいと思います。
子どもが笑顔になること。
何度も「やって」と言ってくること。
安心した顔を見せてくれること。
あとになって、ふと思い出して話してくれること。
そこにはきっと、その子にとってうれしい関わり方のヒントがあります。
子どもに喜ばれている行動を少しずつ増やしていく。
それだけで、親子の距離は、自然と近づいていくのだと思います。
📝 簡単なワーク
今日は、子どもに喜ばれていると思う自分の行動を、5つ書き出してみましょう。
たとえば、
・寝る前に絵本を読む
・子どもの話を最後まで聞く
・一緒にお風呂に入る
・好きな遊びに付き合う
・「がんばったね」と声をかける
・怖いとき、不安なときにそばにいる
どんな小さなことでも大丈夫です。
書き出したら、その中からひとつ選んでみます。
「これは、少し回数を増やせそうだな」
「これは、今日もできそうだな」
そう思えるものがあれば、無理のない範囲で少しだけ増やしてみてください。
さらに余裕があれば、子どもが喜びそうな新しい関わり方も、ひとつ考えてみましょう。
大きなことをしなくても大丈夫です。
子どもにとっては、パパやママが自分のために少し時間を使ってくれること。
それだけで、十分うれしいことなのだと思います。
(2026年4月26日記)
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
『パパの子育て奮戦記』では、若い頃に書いた子育て日記をもとに、今の視点から振り返りながら綴っています。
子育ての中の小さな出来事が、どこかで誰かの気持ちを少しだけ軽くしたり、温かくしたりできたら嬉しいです。
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この記事は、2005年9月12日のSo-netブログ原稿「お母さんは宝もの」をもとに整えた再構成エディションです。

