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★ADHD児にひらがなと数字の指導

ADHD児に「ひらがなと数字のおけいこ」 2006.4.20 第180号

新1年生のBさんは、ADHDという障害をもっている。3分(1分?)と落ち着いていられないのだ。周りのペースに合わせることがとてもむずかしい。
ようやく少しずつであるが、学校生活(特別支援学級での生活)に慣れてきた。
そこで、初めて学習ドリルを使って、「ひらがなと数字」の指導をスタートをした。

◆1 学習ドリル「ひらがなとすうじのおけいこ」

さて、今朝の朝学習の時間は、「ひらがなとすうじのおけいこ」という文字通りひらがなと数字の練習帳(学習教材)と出会わせることに決めていた。この時間は、他の二人はそれぞれの学年で過ごしているので、Bさんと二人きりの時間なのだ。

さりげなく学習教材「ひらがなとすうじのおけいこ」を見せながら、
私「きれいな絵(表紙)だよね。 他の1年生の男の子が、『これほしい。』と言うんだけど、『これBさんのものだからだめ。Bさんが要らないといったらあげるね。』と答えたんだ。Bさん、これ要る。使ってみる。」

Bさん「(ほとんどよく見ないで)要らない。」

私「そうか、じゃAさんにあげてこよう。Bさん、要らないって。きっと喜ぶぞ!」
(腰を浮かせて行こうとする。)

Bさん「待って! やっぱり要る。」と言って、手にとろうとする。

私「そうなの。要るの?」「これ、きれいな絵だよね。」と言って、一緒に見る。

Bさん(ぱらぱらとめくりながら、裏表紙にある迷路を発見!)「これやる!」と言ってやり始める。

私「あっ、迷路だ。おもしろそう。」(あせらない。あせらない。まずは、相手のペースに合わせて(ペーシングして)……。)一緒に迷路を楽しむ。

私「おもしろかったね。今度は、(反対の頁にある)数字の「1」を書いてみようか。」(相手のペースに合わせた後は、少しずつこちらのペースに導いて(リード)……。)

Bさん( 思わず というか ついうかっり というか)「うん。」と言って、1という数字をなぞり線にそってなぞり始める。

私(しめしめ。うまくいったぞ。)「う~ん、上手に書けたね。」

Bさん(5回ぐらい書いて、あきたのか)「ぼく、もうやめる。」

私(えっ、もう。おっと、フィードバックを頻繁にすることが大切だな。やめるという言葉は聞こえないふりをして)「おおすごい。この1も上手。あっ、この1も上手。」と言いながら、◎をつけていく。(もちろん、Bさんにとっての上手である。)

Bさん(めんどくさそうな表情からうれしそうな表情になって)1をまた書き始める。

私(◎をつけながら、ほめつつ)「今度は、この○を一つだけぬれるかな。」と聞く。

Bさん「ぼく、やめた! わかんない!」

私「うん、ここを一つだけぬればいいんだよ。」と赤鉛筆で少し塗ってみせ、赤鉛筆を渡す。

Bさん(赤鉛筆で残りを塗る。)

私「おーすごい!全部出来た。花丸だね。」と大いにほめて、実際に花丸を書いた。そして、「お母さん、きっとびっくりするね。『Bさん、すごい!』って。」

こんな調子で、この後はひらがなの前段階としていろいろな線を書く練習をして、みっちり10分余り学習教材「ひらがなとすうじをおけいこ」を使った。そして、

私「じゃー、これはBさんの名前をちゃんと書いてあげるね。」と言って、「ひらがなとすうじをおけいこ」にBさんの名前を書いた。Bさんは、満足そうに見ていた。

◆2 ひらがなや数字の練習をしたわが子に驚いたお母さん

 午後3時頃、お母さんが迎えに来た。「ひらがなとすうじをおけいこ」を見せつつ、初めて数字を書いた話をした。そして、家でも少しおおげさに(我が子がすうじのおけいこをしたことを)喜んでほしいとお願いした。

お母さんは、「家ではひらがなや数字の練習など絶対にしない!」と言って、びっくりすると同時に喜んでいた。(当然入学前にひらがなや数字の練習をさせようとしたはずだ。)

思えば、はじめの2週間ぐらいは、私が毎日連絡帳にBさんの成長の様子などを書いてあげても、お母さんからはサインのみで返信がなかった。

先週の終わりから、送り迎えの時の私との会話の最中、お母さんに笑顔が見られるようになってきた。連絡帳に返信も来るようになった。

そして、今週の水曜日、初めて「先生のおかげで……。」と言ってくださった。嬉しかった。「やっぱり私だとなかなか言うことを聞かないで……。」とも。

◆3 子どもとその保護者の笑顔が仕事のやりがい💕

実は、私は朝7時50分頃特別支援学級の子供たちが登校してきてから、2時(週1回だけ4時間の日がある)または3時頃、子供たちが下校するまで、ずっと一緒なのである。2限と3限の間の比較的長い休み時間もずっと子供たちと一緒、お昼休みもずっと子供たちと一緒。その間、休憩は全くない。目を離せない子供たちなのだ!

教務室へ行くことなどないのだから、当然お茶もお菓子もない。職員朝会ですら出ていない。(あとで、メモをもらっている。)こんな生活が1年以上も続いている。さすがに、子供が帰った後は、クタクタになる。

思い起こせば、昨年の1学期など、担任している子にはたっぷり毎日1時間15冊から30冊以上も絵本を読み聞かせながら(今は2年生になっているが、Aくんは読み聞かせが大好きだった。)、我が子には、普段の日は10分程度の読み聞かせだった。(あまりに学級で読み聞かせをするので、のどが疲れてしまっていた。)

そんな中で、子供たちのお母さんやお父さんの笑顔や感謝の言葉は、まさに元気の源。それがあって、励まされ、癒され、教師という仕事を続けることが出来ている。もちろん、子供たちの成長や笑顔にも。

自分で言うことではないが、教職というのははたで見る以上に神経を使い、疲れる仕事だ。子供たちや親の笑顔ばかりでなく反発、怒り、嘲笑、時には暴力すらも受けることがある。

 それでも、子供たちやお父さん、お母さん方の笑顔を見ることを喜びとして、仕事に精を出す。それが教師だと、私は(おそらくほとんどの教師は)思っている。

*追記

・今年度から、新1年生の男の子を一人、担任している。特別支援学級(情緒障害児学級)担任として、今まで二人担任しているので、合わせて3名の担任である。

・この子は、就学前のスクリーニングテストをやろうとしないどころか、問題用紙を破いていた。それぐらい、書くテストには抵抗が強かった。

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