毎年必ず起こる、海や川での水難事故。祖父母が少し目を離したスキに、幼い子どもが池に落ちて亡くなった事例もあります。親は、こうした事故で子どもを失うことになったら、後悔しても後悔しきれないでしょう。では、どうしたらそうした事故からわが子を守れるのでしょうか?
次の公園で実際に起きた事故の事例を通して、事故からわが子を守る最大のポイントについてお伝えします。
★わが子を事故から守る最大のポイント 2006.10.5 第257号
2006年9月下旬に全校遠足があった。大きな公園でお昼を食べ、そのまま公園で遊んでいた最中に、かなりの事故があった。額を2針ほど縫い、CTスキャンを撮るほどのものであった。
◆1 公園で遊んでいた最中に事故発生
○年生の男児が額から血を流していて(泣いていた)、養護教諭(保健の先生)から手当を受けていたのを見つけた。
事故が起きた現場は、次の通りである。
【小高い丘と砂場】
このほんの少し小高い丘から駆け下りることを繰り返して、子供たちは楽しんでいたのだった。
読者のみなさんは、どんな事故が起きたか予想できるだろうか?
私も事故発生の少し前、駆け下りてくる子供たちを横目で見ながら、「楽しそうだな。」と思って通り過ぎたのであった。何しろ私は、特別支援学級担任なので、まず目の離せないわが子(担任している子)をしっかり見守らねばならない。わが子がいる遊具の方を見守っている。わずか3人の子どもをケガなどさせたとあっては、大変である。
私も他の教諭と同じく、さっと見ただけでは、その危険性に気づかなかった。
(しばし見ていれば気づいたと思うが、何しろ意識はわが子であったから。)
どんな事故が起きたか?
男児は、小高い丘から駆け下りているので勢いが止まらず転んでしまい、しかも運の悪いことにコンクリートの角の部分に頭をぶつけてしまったのである。
見ていた複数の人の証言によると、その前にも何人かの子供がコンクリート手前の砂場で、勢い余って転ぶことがあったという。
私は、血を流し泣いている男児を見ながら、「あんなところで事故が起こるなんて!」と思いつつも、危険を予測できなかったことを「申し訳なかった」と思った。そして、全職員で子どもの命を預かっているわけで、もっと心してかからねばと思った。
◆2 子どもを事故から守る最大のポイント!
さて、事故から身を守る第一は、危険予知能力を高めることである。この場合で言えば、駆け下りてきて勢いが止まらず転ぶということ、その結果コンクリートに頭をぶつけるということである。
今、考えてみると、この環境の中で、コンクリートの角に頭をぶつけるという最悪のケースが起こったことがわかる。(何も角でなくても、あるいは頭でなくてもと思うが……。)
いきなりそうした事故が起こるのはまれである。前触れがあることが多い。この場合、何人かが勢い余って転ぶ(コンクリートの手前で)という現象がそれである。この前触れ段階で危険をキャッチして、ブレーキをかけるのが、大人である教師・親の役割である。
常識的に考えて大人である親・教師の方が危険予知能力が高いわけだから、子どもの行動の安全をしっかり見守ることが必要だ。
危険予知能力(判断力)を高めることが第一だと思うが、それだけではダメである。
危険な行動にストップをかけるブレない芯の強さ(勇気)が必要だ。
楽しそうに駆け下りている子供たちに、あえてストップをかけるという断固とした行動が必要なのである。
◆3 飛ばない「勇気」
ここで思い出すのが、フナイ・ミーティング2002(船井幸雄・七田眞・梅澤重雄3名のジョイント講演会)で日本航空学園理事長梅澤重雄さんが講演の中で力説されていた「飛ばない勇気」である。
お客さんたちが飛行機に乗りたいという気持ちーそれもわざわざ遠くからお金をかけてやってきてーは、すごくよくわかるが、気象条件が悪いなど、条件が整わない場合は、絶対に飛行機を飛ばさないそうだ。この飛ばない勇気を力説していた。(ついついこんなに遠くからわざわざこれらたのだから、何とか飛ばそうと思いがちなのだそうだ。)
そして、真のサービスとは、飛行機は絶対に落ちないという「安心感」だとも言われていた。(関西で起きた私鉄事故の大惨事は、安全より利益を優先するという会社の方針が引き起こしたようなものだ。真のサービスとは、確かに「安心感」だろう。)
このことは、航空機のことばかりでない。「海水浴に行った。波が高い。危険だ!でも、子供たちは楽しみにしている。」「登山に行った。天候がよくない。」……似たような事例はたくさん考えられる。
危険予知能力とそれに基づいた断固とした行動(勇気)。おそらくは、これが両輪だろう。そして、この二つこそがわが子を事故から守る最大のポイントである。
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*追記
○日本航空学園理事長梅澤重雄さんは、講演の中でこうも言っていた。
「我々は、どこかへ行くと危険なところはどこか!?
このことをまず考えてしまう。
このホールならあのシャンデリアの下が一番危ない。次に……」
この姿勢に学ぶべきである。我々親たちは、子供が遊ぶ場所であれ勉強する場であれ、子供がいるところで危険なところはどこか!?と自然に頭が回るようでなければいけない。
○私自身、海で溺れそうになったことが2回ある。1回目はボーイスカウトでのキャンプ中だった。天候があまりよくない中で、ボーイスカウトの隊長がせっかく来たのだからと海水浴のゴーサインを出したのだった。波が高くて、膝ぐらいでも波が来ると足が立たなくなる状態だった。
もう一つは、親戚で海水浴に行ったときだった。その時も、波が高くて、それも波が引いていくときにすごい力で引っ張ってきた。それで、数メートル沖サイドに引っ張られて、溺れそうになった。
いずれも、天候があまりよくなく、本来は海水浴ができない、少なくとも危険な状態だったのにもかかわらず、せっかく来たのだからというある意味思いやりからの判断であったのだろう。「飛ばない勇気」を発揮するのは容易ではないのだ。(2019/09/22)
○親は手間をかけ、ちゃんと子どもを見ている必要がある。「親」という漢字自体が、木の上に立って「無事に行ってくるか・無事に帰ってくるか」見るという作りになっているように。
○当然のことながら、事前の視察をしている。その際、遊具の点検(整備不良で危険でないかどうか。)をするのが原則である。