《読み始める前に》
外で働くパパと、専業主婦として子育てに向き合うママ。それぞれの立場に、見えない「負い目」や「戸惑い」があるかもしれません。けれど、子育ては、次世代を担う人を作るという大切な、大切なミッションがあり、子どもと過ごす時間は、「宝物の時間」だと思うのです。主婦であることに負い目を感じる必要は全くないと思っています。
パパの子育て奮戦記:第7号
長女アキコ(小1・6歳)、次女クニコ(2歳)、ママ、パパ(私)、祖母(70歳)
パパが伝えた「今しかない大切な時間」
この日、私は出勤前にママに声をかけました。
「育児、楽しんでな。だんだん大きくなると、友達・彼との関わりの割合が高くなるんだから。子どもが『ママがいないと泣く』時期なんて、本当に今だけなんだから。今日は運動会の代休だし、おれは無理だけど、祖母と一緒にどこか行って楽しんできなよ。」
そう言って、もう一つ渡したのが、本田健さんの『きっと、よくなる!』という本。私が付箋を貼っておいたページには、こんな一節がありました。
「子育ては、世界一すばらしいライフワーク」
子育て中のお母さんから、「ライフワークを見つけたいのだけど、育児期間中だから見つけられない。どうすればよいのか」という質問がありました。私も妻と一緒に四年間育児に没念しましたが、これは、人生で宝物のような期間でした。子育てには世界でいちばんすばらしい仕事なのですから、子供と一緒に過ごす時間を楽しんでほしいと答えました。ライフワークは仕事ではありません。私は、ライフワークとは自分らしさを愛する人と分かち合うことだと考えています。そういう意味では、子供と最高の時間を過ごすのは、すばらしいライフワークといえるでしょう。(中略)仕事をやっているほうが偉いという観念を手放して、子供との時間をぜひ心ゆくまで楽しんでもらいたいと思います。(引用)
レストランで過ごした、かけがえのない一日
帰宅後、ママに「今日はどうだった?」と聞くと、嬉しそうにこう話してくれました。
「祖母と4人で買い物に行って、そのあと“ピノキオ”で昼食。最後にパフェも食べたの。子どもたち、大満足だったよ。」
ピノキオは、私たち家族がときどき行くお気に入りのレストラン。パパとしてその時間に関われなかったのは、少し残念ではありますが──祖母との交流も深まり、子どもたちにとっても素敵な一日になったのなら、それで良しです。
“働いていない”という負い目を超えて
専業主婦であることに、ママが負い目を感じる必要なんて、まったくありません。
むしろ「今しかないこの時間」を、思いっきり楽しんでほしい──それがパパの本当の願いです。
子育ては、間違いなく「世界一すばらしいライフワーク」なのですから。
今、振り返ってみて
長女が生まれて4年後に次女が生まれたこともあり、妻はおよそ9年間、専業主婦として子育てに専念してくれました。
パパである私が、それを望んだのです。
私は、子育てはとても大切な大切なことであり、「三つ子の魂百まで」という格言の通り、とりわけ子どもが小さいければ小さいほど、その影響は大きいと考えてきました。
子育ては、片手間でできるほど甘いことではない! そう考えてきたのです。妻がしっかりと子育てしてくれることは、本当に安心でした。それは、子どもたちもそうでしょう。
妻にしてみれば、家にいる時間が長くなると、「社会から取り残されている」と感じてしまうこともあったかもしれません。外で働く自分の姿と比べて、「私は何もしていないのでは」と、罪悪感を感じてしまったことも、あったかもしれません。
私は、子育ては次世代の人を育てるという一大事業であり、とても価値あることだ!という認識でいました。ですから、決してそのような罪悪感や負い目を感じてほしくなかったのです。
私がそういうスタンスでずっといたこともあってか、妻は心底子育てを楽しんでいました。次女が乗る三輪車をにこやかに押していた妻の姿を今でも思い出すことができます。
子どもにとっても、ママがそばにいてくれることは、何よりの安心であり、とても嬉しいことだったに違いありません。
──“子育ては、世界一すばらしいライフワーク”
それは、当時の私が心から思っていたことですし、今もまったくブレていません。妻は、9年間の主婦の間、それを十分に満喫したと思いますし、私はパパとして、主婦である妻に子育てを任せ切ることなく、働きながら子育ての楽しさを十分に味わってきました。
*「あったかい家族日記」は、長女アキコ(2025年7月現在27歳・既婚)と次女クニコ(23歳・公認会計士)の成長を、パパの視点で約20年間にわたり綴った実録子育てエッセイです。
*二人が幼児だった頃から大学入学、そして結婚前後までの家族の日々を記録し、累計アクセス数は400万を超えました。
*七田チャイルドアカデミー校長・七田眞氏にも「子育てに役立つブログ」として推薦された本連載は、So-netブログ閉鎖(2025年3月)を機に、「記録」と「今の視点」を重ね合わせて再編集した〈日々の記録に、“今”を添えた子育てエッセイ〉として、noteで再連載しています。
*この文章は、2005年5月30日にSo-netブログで公開された『子供との時間を心ゆくまで楽しんでほしい』に、「今、振り返ってみて」を加筆した再構成エディションです。