◆リード:わが家では、「あなた祝う人、私祝ってもらう人」ではなく、家族全員の誕生日を祝うことを伝統としてきました。そうすることで、思いやりのある子に育ってほしかったし、あったかい家族を実現したかったからです。
この伝統は、この理由以上に大きな価値があることに気づきました。それは……。
2011.10.19 ★家族みんなの誕生日を祝う価値
ー14年間で1200号を達成したブログ「あったかい家族日記」第852号 よりー
*近況:江戸時代末期の歌人 橘曙覧(たちばな・あけみ 1812~1868)の短歌
■たのしみは 妻子(めこ)むつまじく うちつどひ
頭(かしら)ならべて 物をくふ時
■たのしみは 晝寝目ざむる枕べに
ことことと湯の 煮(にえ)てある時
■たのしみは 朝おきいでゝ昨日まで
無(なか)りし花の 咲ける見る時
9月に、これら橘曙覧の、<たのしみは>で始まり<~時>で終わる短歌を学習しました。
その後、担任している子どもたち(特別支援学級の5年及び6年生)に、
それぞれ楽しいのはどんな時かを問うてみました。
ある子は、「テレビ番組の<相棒>を見る時」と言いました。
ある子は、「DSのソフトをクリアーした時」と言いました。
また、ある子は、「家族でディズニーランドへ行った時」と言いました。
みなさんは、どんな時が楽しみですか?
🔶1【実母の誕生日プレゼント作りを始めたアキコ、クニコ】
夕食を終えた7時30分頃、気がつくと、わたしを除いた3人は、アキコの部屋に集まって何かしていました。何をしているのかとのぞいてみると、2日後に迫ったあーちゃん(わたしからは実母)の誕生日手作りプレゼントを作っているのでした。
クニコ(小3)は、あーちゃん(クニコからは祖母)のために、布製のコースターを作っていました。
アキコ(中1)は、あーちゃんのために、巾着を作っていました。
妻は、アキコやクニコの質問に答えながら、作り方の実地指導をしていました。
私「ほう、あーちゃん喜ぶだろうな。
こんなにがんばっているんだったら、
お父さんが梨でも切ってあげようかな。」
(いつもは妻が切っている。)
アキコ「大晦日 定めなき世の 定めかな 。」
クニコ「いきなり何言ってんの。」
アキコ「シャッフルでipodを聞いているから、いろんなのが出てくるんだよ。」
私(時間を惜しんでipodで勉強しながらプレゼントを作っているのか、
音楽を聴きながらプレゼントを作っているのか、一体どっちなんだろう?)
アキコ「彼の背の高さはどれくらいですか? って、英語で何て言うの?」
私「How tall is he? だろ。」(やっぱり勉強しながらかな?)
妻「そうね。」…
アキコ「お父さん、梨 切ってくれるんじゃなかったの?」
私「ああ、そうだった。」
(梨を切りに立つ。)
私「ほら、一人2個と半分ずつだぞ。」
アキコ・クニコ・妻・私(さっそく頭ならべて梨をくふ)…
梨をみんなで食べながら、あーちゃんの誕生日のプレゼントを作り続ける子どもたち。
実地指導する妻。
梨を切ってあげた私。
こうした情景が、私とクニコが入浴する8時半までのちょうど1時間続きました。
そこで、先の短歌
■たのしみは 妻子(めこ)むつまじく うちつどひ
頭(かしら)ならべて 物をくふ時
が思い出された次第です。
家族の一人の誕生日を祝うために、みんなで力を合わせてプレゼント作りをする一時。
確かに楽しい一時です。このただ「物をくふ時」では、楽しみは半分以下でしょう。
この「むつまじく」というのが、肝心なところですね。
🔶2【家族みんなの誕生日を祝う伝統】
わが家の場合、子どもたちの誕生日を祝うことはもちろん、
父母(つまり私と妻)、実母、義母、義兄の誕生日を祝うようにしてきました。
(祖父は結婚時にすでに亡くなっていたので、これが家族みんなです)
もう完全に習慣化しており、子どもたちも当たり前のように、
プレゼントを作ったり、メッセージを書いたりしています。
月例家族会議で家族の誕生日はチェックされ、みんなで祝うようにそれなりの準備をするわけです。
なぜ、家族みんなの誕秒日を祝うのか?!
それは、「あなた祝う人、私祝ってもらう人」ではなく、お互いに祝い合うことで、思いやりのある子に育ってほしかったし、何よりも「あったかい家族」を築きたかったからでした。
そのために、ずっと続けてきた伝統なのです。
おかげで、祝ってもらう喜びばかりでなく、祝うことで相手を喜ばせる喜びも、アキコ、クニコは体験してきています。思いやりのある子に育っていると、私は判断しています。
🔶3【幸福は人から人へと<感染>する】
『幸福の習慣』(トム・ラス ジム・ハーター 著、森川里美 訳)には、次のように書いてあります。少し長いが引用します。
ハーバード大学が1万2000人以上を対象に、30年以上にわたって追跡した研究によると、日々接している家族や友人が幸せを感じていると、幸せを感じる可能性が15%高まるという研究結果が出ています。
しかも、幸福は直接知らない人にまで影響します。
あなたにAさんという友達がいるとします。Aさんの友達Bさんが幸せを感じていると、あなた自身はBさんを直接知らなくても、Bさんの幸せがAさんに影響し、さらにその影響を受けてあなたの幸福度は10%高まります。幸福は次々と周囲の人に影響を与えていくのです。このハーバード大学による大規模な社会的実験で、人の幸福度は自分から数えて3人目まで影響することがわかりました。
具体的には「あなたの友達の友達、そのまた友達の幸福度が高いと、あなたの幸福度は6%向上する可能性がある」ということです。逆に、あなたが幸福を感じていると、あなたの配偶者、配偶者の同僚を経て、その同僚の家族が幸福を感じる可能性が6%高まるということもできます。
<6%の幸福>というのは注目するほどの数値には見えないかもしれませんが、収入に換算すると、この影響の大きさが実感できるでしょう。
ハーバード大学の研究では、年収が1万ドル(約80万円~100万円)増えても幸福度は2%しか増えないことがわかりました。この結果を踏まえて、研究者は「幸せになりたいなら、収入を増やすよりも、よき家族や友人との関係を強める方が効果的」だと結論付けています。(同書50P~52Pより引用)
このデータからすると、少しばかり収入を上げることで、幸福度を上げようとするよりも、たとえかなり収入が下がっても、日々接している家族が幸せを感じるようにした方がずっと効率的ではないか。
しかも、その幸福感は、幸せを感じている家族に接している自分ばかりでなく、<人の幸福度は、自分から数えて3人目まで影響する>というのです。
マザー・テレサは、「愛はまず家庭から始まります。」と言いましたが、それは真実だとこのデータ上も言えるわけです。
私や妻、アキコ、クニコが、家族で幸福度を高めて、それぞれの職場や学校に行くとき、それぞれそこでの隣人の幸福度を高めていることになります。私の場合なら、担任している子どもたち、同僚、上司……。
そう考えると、この誕生日祝いもさらに大きな意味があることになる! と、
この『幸福の習慣』を読んで思ったところです。
- 作者: トム・ラス
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2011/10/16
- メディア: 単行本