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★寓話を使って子どもに「学ぶ」価値を伝える

「知力こそ最高の力」 2005.12.18 第135号

ー寓話で子どもに学ぶ価値を教えるー                

◆1 ユダヤ人にとって知性とは ー『ユダヤ商法』よりー

ユダヤ人の母親なら、自分の子どもに、必ずたずねるなぞなぞがある。

「町がキリスト教徒によって襲われて、みんなで命からがら逃げなければならないとき、何をもって逃げればいいかしら?」
そうすると、幼い子どもは「お金」とか「金、銀」「ダイヤモンド」と答えるものだ。
すると母親は「それも奪われてしまうわ。答えは色も形もないものですよ。」ともう一度たずねる。それでも子どもが答えられなければ、「それは知性よ」と教え諭すのである。

これは、ラビ(ユダヤ人地域社会の指導者)であるマーヴィン・トケイヤー氏の言葉です。『ユダヤ商法』(日本経営合理化協会出版局)に載っていました。

同じ本の中で、氏はこうも書いていました。

教養の高い特別な家庭ばかりでなく、ユダヤ人の子供は、学ぶことが何よりも大切であると教える様々な寓話を聞かされながら育ってゆく。

訳者の加藤英明氏によると、ユダヤの友人に、幼いとき、母親からこのなぞなぞを聞いたことがあるかとたずねると、口をそろえて、その話は聞いたことがあると答えたといいます。つまり、特別教養の高い家庭の話ではないのです。

「世界中に離散して暮らしていたユダヤ人は、何回となく家を焼かれ、財産を没収され、追放されるという目にあってきたが、そのようなときは、いつも身ひとつで逃げなければならない。しかし、身に付けた「知性」だけは、生命さえあれば、誰にも奪われないで逃げることができる。だからユダヤ人にとって、「知性」が最大の財産となってきた。」(前掲書)

ユダヤ人にとって、知性とは、自分と家族の身を守るための盾であり、成功するための鍵であり、ビジネスで勝者になるための源泉となる力なのだそうです。
しかも、その教育の場の中心は、古代から学校ではなく家庭にあったといいます。子どもを教える責任は、誰よりもまず親に課せられてきたのだそうです。

日本の親たちも、もっと知性の大切さ、学ぶことの大切さを、繰り返し様々な寓話を使って子どもに伝えるべきだと、率直に思いました。

では、具体的にどうやったらいいのでしょうか?

◆2 寓話を使って学ぶ価値を伝える ー『ユダヤ5000年の知恵』を生かすー

私は、わずか4行程度の、ラビ・M・トケイヤー『ユダヤ5000年の知恵』(実業之日本社)に載っていた、次の話を、子ども向けに脚色して話すことにしました。

※もとの話は、次のたった5行程度。子ども向けに脚色して話さないと、子どもは聴いてくれないでしょう。

「ある船上での話。船客はみな大金持ちで、その中に一人のラビが乗り込んでいた。金持ちたちはお互いに富の比較をしていた。するとラビが、「私が一番富んでいる人間だと思うけれども、いまの私の富を皆さんに見せることはできない」と言った。 海賊が船を襲った。金持ちたちは金銀宝石、すべて自分たちの財産を失った。海賊が去った後、やっとのことで船はある港に着いた。~」(ラビ・M・トケイヤー『ユダヤ5000年の知恵』(実業之日本社)より)

◆3 どうやって子ども話したか

私「とっても豪華な船がありました。シャンデリアがついていたり、グランドピアノが置いてあったり、出される食事もとっても豪華でおいしいんです。」(身振りで船の形を示す)
アキコ(小1、7歳)・クニコ(3歳):ふんふんと聞いている。

私「そこには大金持ちの人たちがたくさん乗っていました。あるお金持ちのグループの間で、誰が一番富んでいる(お金持ち)か、自慢し合い(比べっこ)が始まりました。」

▶︎お金持ち1「わたしは、こんなにお金をもっている。」こう言って、その金持ちは財布にたくさん詰まったお金を見せました。そして、かばんを開いて、その中にもぎっしり詰まったお金を見せました。10億円はあるでしょうか。その男は、「どうだ。かなわないだろう!」と言わんばかりです。

アキコ・クニコ:興味津々に聞き始めた。

▶︎お金持ち2「おれは、これだ。」といって、2番目のお金持ちがテーブルの上に、金の延べ棒を出しました。テーブルの上にうず高く積み上げられ、まぶしさで目もくらむばかりです。お金にすると100億円はありそうです。その男は「どうだ。わしが一番どろう!」と自慢するように言いました。

▶︎お金持ち3「わたしは、これよ。」といって、3番目のお金持ちが手のひらの上に、きらきらと光り輝くダイヤモンドを出しました。そしてその金持ちの女の人は「これ一つで10億円よ。」「そんなのが、このバックに30コほどありますわ。」と言いました。勝ち誇ったように言いました。

そして、3人の金持ちが「今度はあんたの番よ。」と、四番目の男の人(ラビ)に言いました。その男の人は、今まで自信ありげに笑って話を聞いていましたが、次のように答えました。

▶︎四番目の男「いや~、私はみなさんの誰よりも富んでいるが、今私の富をみなさんに見せることはできない。」と答えました。

さて、そんな話が終わって、少しして突然、海賊がやってきました

海賊「命が惜しかったら、金目のものを残らず出せ!」と言いながら、刀を目の前に見せます。
先ほどの大金持ちたちは、震え上がって、みなお金や金の延べ棒、ダイヤモンドなどすべて差し出しました。四番目の男は、何も出すものがありませんでした。

海賊が去り、お金持ちたちは、すべての財産を失いました。船は、やっとのことで、ある港に着きました。

四番目の男は、かしこい(頭がよい)ことをすぐに港の人々に認められて、その町で学校を開いて生徒たちを教えはじめました。そして、どんどんお金をもうけることができました。四番目の男の財産とは、かしこさだったのです。

しばらくたった後、この四番目の男は、かつて船で一緒だったお金持ちたちと会いました。かつてのお金持ちたちは、みんなみじめに貧しくなっていました。
そして、そのお金持ちたちは、こう言いました。

「確かにあなたが一番富んでいた。かしこさこそが富をつくりだすのだ。」と

私「勉強して頭に入ってものは、だれからも決して奪われないんだよ。どこへにも持って行けるんだ。だから、勉強してかしこくなるってとってもいいことなんだよ。」

アキコ・クニコはずっと興味津々に聞いていました。

つまり、私のねらいは達成できたのです!

アキコはこの話を聞いた後、「この間の、剣(矛)で盾を突く話だったかな~、あの本の続きを聞きたい。」などと、言っていた。これは矛盾という言葉の起こりの話だが、以前聞かせた話である。寓話は、子どもは好きみたいだ。

これからも、いろいろな寓話を話して聞かせようと思う。

(2005.12.18週刊「心にしみた言葉」第5号改訂版)

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*付記

【第16回父と子塾】
12/24(土)午前中10時20分から12時20分まで、第16回父と子塾をした。
プログラムには、いつも本をよんであげるコーナーがある。今回は、クリスマスカロルを読んであげ、その後、学ぶことの大切さを教える寓話「今回の脚色した話」をした。

※ 2006.1.9夜アキコが妻にお風呂でこの「金持ち4人が海賊に襲われた話」をしていた。金額が100万円、金の延べ棒が金貨になったりしていたが、ほぼ同じ内容だった。よく覚えているものだと、感心した。

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