《読み始める前に》
「うちの子、友達付き合い、ちゃんとできてるのかな?」
そんな心配をしたことはありませんか?
ある日、小1の娘が持ち帰った一輪の花をきっかけに、「人の評価ってどう決まるんだろう?」という問いに、親子で向き合うことになりました。
パパの子育て奮戦記:第10号
長女アキコ(小1・6歳)、次女クニコ(2歳)、ママ、パパ(私)、祖母(70歳)
「好きなんだけど…みんなには嫌われてる子」
小学校1年生のアキコには、どうやら「好きな男の子」がいるようです。
お互いに好意を抱いている様子で、その子は家でもよくアキコの話をしているのだとか。
でも、アキコが言うには──
「クラスの子の中には、あの子のこと嫌ってる子もいる」そうです。
理由を聞いてみると、どうやらその子、ちょっと手が出がちのようで──
クラスメイトの筆箱をわざと落としたり、整列中に前の子をつついたりと、ちょっぴり“困ったちゃん”らしい。
運動会の日、実際に様子を見ました。
整列中に、確かに前の子を足でちょんちょんとつついて、前の子がいやそうな顔をしていたのです。
野の花と一緒に帰ってきた娘
ただ──アキコに対しては、どうやらとても優しいらしく、ある日、登校途中に見つけた野の花を、教室でアキコにプレゼントしてくれたそうです。
アキコは、とても嬉しかったのでしょう、花を大事そうに持って帰ってきて、私にも見せてくれました。
正直なところ、運動会での姿を見て、私は「この子、かなりいたずらなところがあるな」と感じていたのですが──
娘の嬉しそうな顔や、ふとよみがえった自分の昔の記憶(そういえば、私も好きな女の子に野の花をあげたことがあった…)も手伝って、思わずこう言っていました。
「×くんも、なかなか優しくて、いい子じゃないか」
娘はその言葉に目を輝かせて、こう返してきました。
「でも、○くんをたたいたり、○さんの筆入れを落としたりして、嫌がられてるよ」
「そりゃ、そうでしょう。そんなことされて、嬉しい子なんていないよ。パパだってイヤだよ。
でも、アキコにはそういうことしないし、お花くれたり、守ってくれたりして嬉しいでしょう。」
好かれる理由も、嫌われる理由も──行動に宿る
私はそのとき、こう語りかけました。
「何をしたかで、好かれたり、嫌われたりするんだよね」
“よいタネをまけば、よい実がなり、悪いタネをまけば、悪い実がなる”
そんなシンプルな人生の法則を、アキコに少しでも感じてほしかったのです。
きちんと伝わったかどうかは、わかりません。
でも少なくとも、親として「今この瞬間に話すべきだ」と感じたので、話しました。
伝えるには、日頃の関係づくりから
子どもに「人生の価値観」や「生き方」を伝えられる瞬間は、いつも突然やってきます。
しかも、それは道徳の時間のように“あらたまった形”ではなく、
何気ない日常の中に、ふいに現れるものです。
だからこそ──
そのチャンスを逃さずに、わが子に自然と受け止められるような、そんな関係性を、日ごろから作っていきたいと改めて思いました。
今、振り返ってみて
このエピソードに出てきた、ちょっぴりいたずらな男の子──実は、長女アキコの結婚式にも出席してくれました。
今はもう立派な社会人で、なんとアキコとその夫の似顔絵を描いてくれていたのです。多摩美大を出た後、アーティストとしての感性と社会性をしっかりと身につけ、好青年になっていました。
当時はいたずらが目立っていたその子も、ちゃんと成長する。
そう考えると、あの頃の心配や注意も、すべて“途中経過”だったのだと思えてきます。
あのとき私は、「人にどう思われるかは、何をするかで決まるんだよ」と娘に伝えました。
でも今、いちばん大事なのは、「何を話すか」よりも、話す側であるパパやママが、わが子に“どんなふうに見られているか”なのかもしれません。
子どもは、言葉の正しさよりも、「誰が言ったか」を見ています。
中学生くらいになるとそれはもう露骨で、「どの先生が言ったか」で、反応がまるで変わることもあります。
それは家庭でも同じです。
「信頼できるパパが言うことだから、ちゃんと聞こう」
──そう思ってもらえるかどうかは、日頃の関わり方にかかっています。
私は、どんなときも「信頼されるパパ」でありたいと願って、できるだけ誠実に、真正面から子どもたちと向き合ってきたつもりです。
ありがたいことに、今も娘たちは、私の言葉に耳を傾けてくれます。
“何を伝えるか”はもちろん大事ですが、
その前に、“信頼されているかどうか”──これが、子育てにおいてベースになるのだと、あらためて感じています。
*「あったかい家族日記」は、長女アキコ(2025年7月現在27歳・既婚)と次女クニコ(23歳・公認会計士)の成長を、パパの視点で約20年間にわたり綴った実録子育てエッセイです。
*二人が幼児だった頃から大学入学、そして結婚前後までの家族の日々を記録し、累計アクセス数は400万を超えました。
*七田チャイルドアカデミー校長・七田眞氏にも「子育てに役立つブログ」として推薦された本連載は、So-netブログ閉鎖(2025年3月)を機に、「記録」と「今の視点」を重ね合わせて再編集した〈日々の記録に、“今”を添えた子育てエッセイ〉として、noteで再連載しています。
*この文章は、2005年6月4日にSo-netブログで公開された『親が子に生き方や価値観を伝える機会をもつ』に、「今、振り返ってみて」を加筆した再構成エディションです。