《読み始める前に》
子どもを叱るとき、パパとママの言葉がちぐはぐだと、子どもは混乱してしまいます。
たとえば、一方がお手伝いより勉強優先と言い、他方が勉強よりもお手伝い優先と言う場合がそうです。
でも「夫婦で同じビジョン」を持っていれば、迷わず対応できるのです。
パパの子育て奮戦記:第38号
長女アキコ(6歳)、次女クニコ(3歳)、ママ、パパ(私)、祖母(69歳)
エレクトーン帰りの夕食での一幕
今日はエレクトーンの日。夜8時近くにママとアキコが帰宅しました。アキコは帰りの車で寝てしまい、そのまま夕食も食べずに布団へ。食卓には、元気いっぱいのクニコだけが座りました。
私はクニコに「箸置きを並べてくれる?」と頼みました。普段は、アキコがやらないでいると、代わりにクニコがよくやってくれるのですが、この日はなかなか動きません。二度、三度くり返すと、ついに「自分でやればいいじゃん」と返してきたのです。
「家族は協力し合うんだよ」
私は「じゃあ、クニコは今度一人でトイレに行ってね。(さっき私がトイレについて行ったばかり)」と伝えました。さらに「ごはんも自分でよそってね」と。
その後もやり取りは続きました。大好きなサーモンのお刺身を前に、「醤油とって。」とクニコが言っても、ママは「自分で取ってかけてね」と静かに答えました。(妻も一部始終を見ていました。)
クニコはしぶしぶ自分で醤油をかけ、「お母さんも自分でとってかけてね。」などと言っていましたが、とうとう参って隣の部屋のカーテンの裏に入りました。(怒ったり悲しいときによく行く“避難場所”です)。
私は隣の部屋との仕切り戸を閉め、「泣いてもだめだよ」というサインを送りました。
少し経つと、「パパ、ごめんなさい」と小さな声が聞こえてきました。
ママはすかさず「もっと大きな声で、パパのところへ行って」と促しました。
クニコは再び「パパ、ごめんなさい」と私の目の前で言い、食卓に戻ってきました。
私はクニコの顔を見ながら、静かにこう伝えました。
「家族はみんなで協力し合うんだよ。」
夫婦で共有する「家族のビジョン」
わが家には「家族憲法」があります。去年の夏休みに、4年ぶりに改訂しました。
その中に「めざす子ども」という項目があり、その8番目には「力を合わせる力」が掲げられています。
今回のケースでは、1番目の「思いやりのある子」、4番目の「躾の身に付いた子」にも関わる出来事でした。
夫婦で「こんな子どもに育ってほしい」というビジョンを共有しているからこそ、黙っていてもすぐに連携がとれました。そして叱るべきときには、しっかり叱ることができたのだと思います。
めざす子どもに育てるために、叱るべきときにしっかり叱ることは、とても大切だと思います。
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今、振り返ってみて
今振り返ると、「確かにこんなことがあったな」と懐かしく思い出します。
あのとき私たち夫婦がとっさに共同戦線を張れたのは、やはり事前に「どんな子に育てたいか」を話し合い、ビジョンを共有していたことが大きかったのだと思います。
本文でも触れましたが、私たちが決めていた「めざす子ども像」は次の8つです。
1 思いやりのある子
2 元気で明るい子
3 あいさつがきちんとできる子
4 躾の身に付いた子
5 かしこい子
6 段取り力
7 身を守る力
8 力を合わせる子
今回の出来事は、この「めざす子ども像」から外れた行動でした。だからこそ「叱る」という形でフィードバックをし、軌道修正を促したのです。結果として、子どもは自分の非を認め、謝ることができました。そしてまた「正しい姿」に戻ることができました。
もし共通の子育てのビジョンがないと、たとえば、一方が「勉強しなさい」と言い、一方は「勉強よりも家の手伝いをしなさい」と言うようなことが生じます。それでは、子どもはどうしたらよいのか、戸惑ってしまうことになるのです。
だからこそ夫婦で一度しっかり話し合い、「どんな子に育てたいか」というビジョンを共有しておくことが大切です。
📝 自分に問いかけてみる時間
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あなたの家庭には「子育ての共通ビジョン」がありますか?
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パートナーと「どんな子どもに育ってほしいか」、話し合ったことはありますか?
📝 簡単なワーク
1. まず夫婦それぞれで「どんな子どもに育ってほしいのか」5つほど書き出してみましょう。
2. 書き出した内容を持ち寄り、お互いに話し合ってみましょう。
これは少し時間をかけて取り組むワークになります。でも、その分大きな気づきが得られる価値あるワークです。
💡「子育てビジョンづくりのヒント」については、拙著『うちの子、どうして言うこと聞かないの!と思ったら読む本』(103〜110頁)にも詳しく書きました。興味があれば参考にしてください。
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「あったかい家族日記」は、長女アキコ(2025年8月現在27歳・既婚)と次女クニコ(23歳・公認会計士)の成長を、パパの視点で約20年間にわたり綴った実録子育てエッセイです。
*二人が幼児だった頃から大学入学、そして結婚前後までの家族の日々を記録し、累計アクセス数は400万を超えました。
*七田チャイルドアカデミー校長・七田眞氏にも「子育てに役立つブログ」として推薦された本連載は、So-netブログ閉鎖(2025年3月)を機に、「記録」と「今の視点」を重ね合わせて再編集した〈日々の記録に、“今”を添えた子育てエッセイ〉として、noteで再連載しています。
*この文章は、2005年6月30日にSo-netブログで公開された『夫婦共通のビジョンで子供を叱る』に、「今、振り返ってみて」を加筆した再構成エディションです。