《読み始める前に》
その時期、その時期の子どもの夢は、大切にしてあげたいものです。
アキコの将来の夢は、小学校3年生ぐらいまでは「お菓子屋さん」でした。
小学校高学年になると、「歌手になりたい」と言い出し、その後は「歌手のマネージャー」。
中学から高校時代になると、リアル感を帯びてきて、「ディズニーランド、つまりオリエンタルランドで働きたい」という夢になりました。
私はその都度、
「そんなの無理。やめときな」
「そんな夢みたいなことを言って、それでは食べていけない」
とは言わずに、
「いいね。だったら、こうするといいよ」
と、できるだけ肯定的に受け止めながら、その夢が叶う方向でアドバイスしてきたつもりです。
アキコも私のアドバイスを受けて、高校時代にはディズニーランドへ母親と行った思い出を綴り、当時の社長に感謝の手紙を書いていました。
そして大学生になって、アルバイトとしてではありますが、ディズニーランドで働くという夢は実現しました。
大学3年生になったアキコは、今度は将来、旅行会社で働こうかと考え、動いているところです。
このように、夢は年齢とともに変わっていきます。
それでも、その時期の本人にとっては真剣そのものです。
だからこそ、親も真剣に向き合ってあげることが、子どもの信頼を得ることにつながっていくのだと思います。
そして、その都度、職業選択の大事な視点を教えていけばいいのです。
次に紹介するのは、そんな向き合い方をした、わが家の小さな事例です。
アキコが小学校2年生のときの夢、「お菓子屋さん」についての話です。
プレパパや、小学生までの子どもを持つパパに向けて、子育ての中で大切にしたいことを綴っています。
また読んでみたいと思ってくださった方は、フォローをお願いします。
パパの子育て奮戦記 第60号|「あったかい家族日記」第289号 再構成版
長女アキコ(8歳)、次女クニコ(4歳)、ママ、パパ(私)、祖母(71歳)
「お菓子屋さん、やめようかな」
12月21日のことです。
帰宅してしばらくすると、小2で8歳のアキコがいきなりこう言いました。
アキコ「お菓子屋さん、やめようかな」
私「どうして?」
すると、
アキコ「だって、儲からないもの」
私は、「儲かるかどうかが大切だと思っているんだな。」と思いました。
そこで、こう話しました。
私「そんなことないよ。その道で一流になれば儲かるんだよ。とってもおいしいお菓子を作れば、たくさんのお客さんが買いに来て、きっと儲かるよ」
アキコは、「ふーん」というか、「そうかな」というような表情をしていました。
私「それに、アキコもお父さんも、ケーキが大好きじゃない。ケーキを食べているときは、とっても幸せだろ。そんな幸せを作り出す仕事だもの。お菓子屋さんになる夢もステキだと思うよ」
アキコは、何となくうれしそうに聞いていました。
職業選択の大事な視点
たったこれだけの会話です。
けれど、将来の仕事を選択する上で、とても大事な視点が含まれていると思いました。
アキコの言う「儲かる」ということは、利益が上がり、ビジネスとして成り立つということです。
つまり、それで生活できるということです。
仕事はボランティアではありません。
それによって豊かに生活できなければならない。
だから、「儲かるかどうか」は、第一に大切な視点だと思います。
けれど、それだけではありません。
仕事は、何かしらの点で社会に役立つものでなければ、そもそもビジネスとして成立しません。
そして、仕事をする上でのやりがいや誇りも持ちにくいのではないでしょうか。
あるお菓子屋さんでの思い出
実は、お菓子屋さんについては、一つの思い出があります。
もう2年余り前の夏のことです。
私は東京で、NLP「トレーナートレーニング」セミナーを受けていました。
セミナー1日目の帰り、重いリュックを背負いながら、新橋駅近くを歩いていました。
すると、ふと、あるお菓子屋さんが目に入りました。
「こんな疲れているときは、お菓子が一番!」
そう思って、ウインドウを眺めました。
あの白桃ゼリーがおいしそうだ。
私「あの、白桃ゼリーください」
店員さん「白桃ゼリーですね。おいくつでしょうか。」
私は少し迷いました。
うーん、「一つ」とは言いにくいなあ。
でも、ボク以外に食べる人はいないし……。
私「すみません、一つください」
すると、店員さんは笑顔でこう言いました。
店員さん「一つですね。ご自宅までどれくらいかかりますか?」
私「30分くらいでしょうか」
店員さんは、白桃ゼリーと一緒に保冷剤を箱に入れてくれました。
店員さん「はい、どうぞ。(笑顔で)ありがとうございました」
「ちょっとステキな気分をあなたに」
ホテルに帰った後、私は白桃ゼリーを食べました。
ほどよく冷えていて、甘くて、とてもおいしかった。
ハッピーな気分になり、
「よし、やるぞ!」
という元気が出ました。
どうしてこんなに気分がいいのだろう。
そう思い返してみると、白桃ゼリーのおいしさもさることながら、店員さんの対応がよかったからだと気づきました。
私は常連客ではありません。
リュックを背負っていたので、行きずりの客だとすぐにわかったはずです。
しかも、注文したのは、たった一つの白桃ゼリーだけ。
それなのに、店員さんは嫌な顔一つせず、丁寧に笑顔で対応してくれました。
保冷剤まで入れてくれました。
あの店員さんの信念や価値観は、きっと、
「一人一人のお客様を大切に」
ということだったのだと思います。
そして、
「できるだけおいしく食べていただきたい」
という思いだったのだろうな、と感じました。
ふと、白桃ゼリーを入れた箱を見ると、そこにはこう書いてありました。
「ちょっとステキな気分をあなたに」
これが、あのお店のミッションだったのです。
たった一人のお客の、たった一つの注文にも、嫌な顔一つせず保冷剤まで入れてくれた店員さんの笑顔。
それは、ミッションに生きているがゆえの笑顔だったのだと思いました。
夢を現実でつぶさず、現実の見方を教える
実は、こんな経験があったからこそ、アキコとの問答の中で、
「ケーキを食べているときは、とっても幸せだろ。そんな幸せを作り出す仕事だもの。お菓子屋さんになる夢もステキだと思うよ」
という言葉が出てきたのです。
瞬時に、その白桃ゼリーのことを思い出していました。
アキコが将来就く仕事。
それは、まず、それで生活できるものであること。
そして、社会の役に立つものであること。
さらに、そのことにアキコ自身が、やりがいや誇りを持てること。
それが満たされるなら、お菓子屋さんでも、何でもよいと思っています。
将来、そんな仕事を見つけてほしい。
そう願いながら、その時々のわが子の夢や、職業選択の構えを大切に育んでいきたいと思います。
(2006年12月30日記)
今、振り返ってみて
子どもの夢は、少しずつ形を変えていく
冒頭にも書きましたが、小さな頃の「将来の夢」は、成長とともに少しずつ変わっていきます。
アキコの場合も、そうでした。
お菓子屋さん。
歌手。
歌手のマネージャー。
ディズニーランドで働くこと。
そして、その後は、エンタメや観光、旅行に関わる仕事へ。
その時々で、夢の形は変わっていきました。
それでも、その年齢、その時期の子どもにとっては、その夢が本当に大切なものなのです。
だからこそ、親としては、
「また変わったの?」
「そんなの無理だよ」
「それでは食べていけないよ」
と簡単に否定するのではなく、その時々の夢に、できるだけ誠実に向き合ってあげることが大切なのだと思います。
「ディズニーランドで働きたい」と言った日
本文の中でも紹介したように、私はその都度、その都度のアキコの「将来の夢」に、できるだけ真剣に向き合ってきました。
たとえば、高校1年生の頃です。
アキコが、
「将来、ディズニーランドで働きたい」
と言ったことがありました。
その時、私は「母の誕生日を祝ったディズニーランドの旅」について、感謝の手紙を書いてみたらどうか、とアドバイスしました。
アキコは実際に、その思い出を文章にして、当時の社長宛てに手紙を書きました。
内容がとてもよかったようで、後日、担当の方から返事が来ました。
「素晴らしい内容なので、手書きで書き直して、もう一度送ってほしい」
という内容でした。
なんでも、社長が直接返事を書けないルールになっているとのことでした。
それでも、アキコにとっては、とてもよい経験になったと思います。
自分の「好き」や「憧れ」を、ただ口にするだけでなく、実際に行動に移してみる。
その一歩を踏み出せたことが、大きかったのではないかと思います。
応援するスタンスでいること
私は、父親として、部活であれ、習い事であれ、将来の夢であれ、子どものやりたいことをできるだけ応援するスタンスでいたいと思ってきました。
もちろん、これは言葉で言うほど簡単なことではありません。
親には親の願いがあります。
心配もあります。
できれば、近くにいてほしいという気持ちもあります。
実際、アキコの就職活動の時には、私自身の気持ちが試される場面がありました。
前の記事でも紹介したように、アキコが第一希望の会社として選んだのは、県外で鉄道、ホテル、レジャー、観光施設など、観光関連事業を展開しているA社でした。
その前に、J社の合格通知が来ました。
こちらは大手の旅行会社です。
しかも、
「新潟支店に勤務してもらいます」
という言葉付きでした。
親としては、地元の会社で、親元に戻ってきてくれることになるわけです。
本当に嬉しいことでした。
でも、アキコの第一希望は県外のA社でした。
だから私は、そちらに合格できるように、精一杯アドバイスをしました。
私「面接で、北海道の遭難事故の件を聞かれるかもしれないから、対応しておいた方がいいよ」
そう言って、関係する資料の参照先も送っていました。
親の願いと、子どもの願い
最終的に、アキコは第一希望のA社に合格しました。
それはつまり、長女アキコが新潟に帰ってこないことが決まった、ということでもありました。
正直に言えば、悲しい気持ちもありました。
でも、それ以上に、娘の一番の希望が叶ったことを嬉しく思いました。
できる限り、子どもの夢を応援する親でありたい。
親としての自分のあり方を、私は貫いたのです。
親元で就職するかどうかは、老後の問題を含めて決定的に重要な問題で、意見が分かれることでしょうが、私がこの信念を貫いたことは、後悔していません。
夢を応援することは、信頼を育てること
さて、「あったかい家族日記」第289号には、本文の後に【付記】として、次のような文章を書いていました。
◉常識で縛ることをせず、子どもの夢を大切にしたいと思う。
親としてそれで生活できるかという視点は、ゆるがせにできないと思うが、将来、わが子の夢実現の足を引っぱったり妨害したりする親にはなりたくないと思う。
当時読んでいた『未来を変える80人──僕らが出会った社会起業家』には、さまざまな社会起業家が登場していました。
・「世界初のマイクロクレジット、グラミン銀行創業者ムハマド・ユヌス」
・「再生可能な木材を中国に広めるシノフォレスト創業者アレン・チャン」
・「有機米のパイオニア、古野農場主宰 古野隆雄」……。
どの人からも、よい社会にしたいという志がびんびん伝わってきました。
しかも、それを理想で終わらせず、経済の採算が合うようにして、ビジネスとして成功させていました。
その本の中に必ず登場するのが、
「そんなの無理」
「やっても無駄」
「それは非常識」
と言って、妨害する周囲の人たちでした。
だからこそ私は、常識で縛ることをせず、子どもの夢を大切にしたいと思ったのです。
そして、夢を否定する親ではなく、応援する親でありたいと思ったのです。
それに、ある意味、子どもは社会からの預かりものでもあります。
その子がいつか、自分らしく社会の中で役割を見つけていけるように支えることも、親の大切な役割なのだと思います。
小さな夢を応援する時間は、親にとっても楽しい
私は、いつも子どもの夢を精一杯応援してきました。
これから記事にしていきますが、長女が、
「生徒会副会長になりたい」
と言った時も、精一杯応援しました。
それは、親としてとても手間のかかることでもありましたが、とても楽しいひとときでもありました。
子どもが何かをやりたいと言う。
親がそれを聞く。
一緒に考える。
親としてできるサポートをする。
そういう時間そのものが、親子の大切な思い出になっていきました。
自分の願いや夢を応援してもらった経験は、子どもの心に残ります。
そうした経験の積み重ねが、親子の信頼関係を作っていくのだと思います。
きっと、そうした積み重ねがベースにあるのだと思います。
現在、成人している子どもたちとの関係は、とてもよいものになっています。
(2026年5月23日記)
共感していただけたところがあれば、「スキ」でそっと教えていただけると励みになります。
📝 自分に問いかけてみる時間
子どもの夢を聞いたとき、私は最初にどんな言葉を返しているでしょうか。
「無理じゃない?」
「それで食べていけるの?」
「もっと現実的に考えたら?」
そんな言葉が、つい先に出てしまうこともあるかもしれません。
もちろん、それは子どもを思うからこその心配です。
でも、その前に一度だけ、
「いいね」
「どうしてそう思ったの?」
「どんなところに憧れているの?」
と聞いてみることはできないでしょうか。
子どもの夢は、まだ形があいまいです。
途中で変わることもあります。
現実には、叶わないこともあるかもしれません。
それでも、その夢を話してくれた瞬間、子どもは親に心を開いているのだと思います。
その小さな入口を、否定の言葉で閉じてしまわないようにしたい。
夢を叶えること以上に、
「自分の話をちゃんと聞いてもらえた」
「応援してもらえた」
という記憶が、子どもの心を支えてくれることもあるのだと思います。
📝 簡単なワーク
今日は、子どもが口にした「やってみたいこと」や「好きなこと」を、一つだけ思い出してみてください。
大きな夢でなくてもかまいません。
・「ケーキ屋さんになりたい」
・「YouTuberになりたい」
3月末まで塾に来ていた子の夢でした。現在約2,000名のチャンネル登録者がいます。3年間、ずっと応援してきました。
・「絵を描く仕事がしたい」
私の小学生の頃の夢です。
・「動物に関わる仕事がしたい」
・「ゲームを作りたい」
・「電車の運転士になりたい」…
どんなことでも大丈夫です。
そして、次にその話が出た時に、まずこの一言を返してみてください。
「いいね。どんなところが好きなの?」
そのあとで、もう一つだけ聞いてみます。
「それに近づくために、今できる小さなことって何だろうね?」
調べる。
見に行く。
本を読む。
絵を描く。
手紙を書く。
体験してみる。
詳しい人の話を聞く。
ほんの小さなことでいいのです。
夢をいきなり現実にしようとしなくてもいい。
でも、夢を話してくれた子どもの気持ちを、少しだけ現実の行動につなげてあげる。
その時間は、子どものためだけでなく、親にとっても楽しい時間になるはずです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
『パパの子育て奮戦記』では、若い頃に書いた子育て日記をもとに、今の視点から振り返りながら綴っています。
子どもの夢は、形を変えながら育っていきます。
その一つひとつに、親が少しでもあたたかく向き合えたなら、親子の時間はもっと豊かなものになるのかもしれません。
また読んでみたいと思ってくださった方は、フォローしていただけたら嬉しいです。
この後も、プレパパや子育て中のパパに向けて、子どもとの関わり方、学び、しつけ、家族の時間について、体験に基づいて綴っていきます。
この記事は、2006年12月30日のSo-netブログ原稿「あったかい家族日記」第289号「アキコの将来の夢は『お菓子屋さん』──子どもの夢は大切に育みたい」をもとに整えた再構成エディションです。

