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なぜ勉強するのか──父が娘に伝えたかったこと

《読み始める前に》

「何のために勉強するのか」

子どもにそう聞かれたとき、親として、何と答えるでしょうか。

将来、安定した職業に就くため。
給料がよくて、楽な仕事に就くため。
将来、苦労しないため。

たしかに、それも一つの考え方かもしれません。

でも、子どもにしてみれば、そんな理由だけで大きなエネルギーが湧いてくるでしょうか。

そもそも、安定していて、給料がよくて、楽な仕事が、本当に「よい仕事」なのでしょうか。

大変だけれど、やりがいのある仕事があります。
楽だけれど、退屈でつまらない仕事もあります。

楽であることと、幸せであることは、必ずしも同じではないはずです。
収入が安定していて楽な仕事がよいなど、親の方で、子どもの職業選択の視点や幅を狭めているような気すらします。

将来仕事に就くために勉強するとすれば、「なぜ勉強するのか」は仕事観も問われます。
わが子には正しい仕事観と合わせて、「なぜ勉強するのか」を語ってあげることで、勉強への意欲を高めてあげたいですね。

そんな思いを持った、ある夜の家族の会話です。

この連載では、若い頃に書いた子育て日記をもとに、今のパパたちにも役立つ形で振り返っています。
プレパパや、小学生までの子どもを持つパパに向けて、子育ての中で大切にしたいことを綴っています。
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パパの子育て奮戦記 第59号|「あったかい家族日記」第130号 再構成版
長女アキコ(7歳)、次女クニコ(3歳)、ママ、パパ(私)、祖母(70歳)


外食の席で出た「どんな職業がいいか」という話

12月10日土曜日の夜のことです。

ボーナスが入ったところで、家族5人、つまり私と妻、小1の長女、3歳の次女、実母に加えて、日頃お世話になっている義母と義兄を誘い、外食をしました。

それぞれが好きな料理を注文し、おいしく食べ終わりました。

そして、デザートやコーヒーを注文した頃のことです。

義兄は高校教員で、進路指導をやっている関係もあり、
就職のことが話題になりました。

実母「学校の事務員なんか、給料もいいからいいでしょう。安定しているし」

妻「でも、友達がそうだったんだけど、父兄とトラブって大変だったよ」

義兄「事務の人が父兄とトラブるかな。教員が保護者とトラブるのは、よくあるけど〜」

そして、

義兄「高校の司書なんか楽そうだ。いつも暇そうにしているよ」

一同、なんとなく、

「それはいい」

という雰囲気になりました。

給料がよくて、安定していて、楽な仕事がよい仕事なのか

私の耳には、その会話の奥に、

「給料がよくて、安定していて、楽な仕事がよい仕事だ」

という価値観が聞こえていました。

そこで、
私「いや〜、やりがいが大切じゃないかな。僕は、少々大変でも、本人がやりがいをもってやれる仕事がいいと思うな。その方がお金も入ってくると思うし。たとえば、本人の特技を生かした職人とか……」

この後、当市で成功した職人の話を、義母や実母がしてくれました。

その話はここでは割愛します。

仕事について、私が大切にしたいこと

ところで、今こうして書きながら、その時の会話を思い起こしてみると、
世間一般の中では、

「収入がよくて、安定していて、楽な仕事」

がもてはやされているのかもしれないなと思いました。

もちろん、私も収入や安定は大切だと思います。

けれど、わが子には、本人のやりがいや夢の実現をこそ大切にしてほしいと思うのです。

楽か大変かではなく、本人が本当にやりたいと思うこと
もしかしたら、その人にとってのミッションに連なるもの。
そういうものを仕事に選んでほしいと思うのです。

そして、その仕事は、多くの人の役に立つものであってほしいと思っています。

大変だけれど、やりがいのある楽しい仕事があります。
楽だけれど、退屈でつまらない仕事もあります。

楽であることと、幸せであることは、同じではないはずです。

もっと言えば、

「将来、楽をするために、今はがんばって勉強する」

日本人みんなが、そんな生き方をめざしたら、日本はどうなるのでしょうか。

そんな動機だけでがんばって勉強してきた人たちが、エリートとして日本をリードしたら、きっと日本自体がつぶれてしまうでしょう。

私はそんなことさえ思うのです。

親が知らず知らずに発している、なにげない会話の影響は大きいものです。

だからこそ、私は先ほどの会話を聞き流すわけにはいかず、発言したのでした。

好きなこと、得意なことで人の役に立つ

わが子には、人の役に立つことで、本人が本当にやりたいこと、
得意というか、好きなことをやってほしい
と思います。

その方が、成功し、幸せになれると思うからです。

たとえば、高校の司書なら、

「仕事が楽そうだから」

という理由で選ぶのではなく、

「本が大好きだ」
「この読書の楽しさを、どうやって生徒たちに伝えることができるだろう」

と、仕事に対して真摯に、そして生きがいを持って、楽しみながらやれる人がいいと思うのです。

私は、子どもにこう語りたいと思います。

「今、がまんしてがんばれば、将来楽ができるよ。だから今は大変でも勉強しよう」

ではなく、

「勉強は楽しいよ。

知らないことが分かるようになって、
できなかったことができるようになって、
自分の可能性が広がっていくよ。

勉強することで、いろいろな力が身に付いて、自分に自信が持てるようになるよ。

世の中は、みんながお互いの力を出し合って、助け合っているんだ。

アキコも将来、みんなの役に立つ仕事をするんだよ。

アキコが、自分が本当にやりたいことを見つけられるように。
好きで得意なことを見つけ、それをさらに磨いていけるように。

そのために、一生懸命勉強しようね。

そして、やりたいこと、好きで得意なことを仕事にすればいいんだよ。

自分の好きなこと、得意なことで、周りの人を幸せにしていく。

そうすれば、自分自身もきっと幸せになれるよ……。」

わが子には、こんな話をしたいなと思います。

まど・みちおさんの詩「朝がくると」なども紹介しながら、
父と子塾で、いずれ話をしたいと思っています。

学ぶことは、世の中をよくする力になる

世界中で活躍しているユダヤ人について、
ラビ(ユダヤ人地域社会の指導者)である、マーヴィン・トケイヤー氏は、次のような話を紹介しています。

ユダヤ人の両親は、子どもが幼い時から、

「あなたは、世界で一人しかいない貴重な存在である」

と言って子どもを尊び、

「どんなことでも、少しでもよいから、あなたの力で自分なりに世界をよくしなさい」

と教えるのだそうです。

また、3歳の誕生日には、父親が子どもにハチミツなどのおいしいものを与えて、次のように教えるのだそうです。

「お前は今日から、学問をする。学問は、このハチミツのように甘くていいものだ。お前は学問をすることによって、後に大きな才能で、世の中の役に立つことができるようになる。学問は、世の中を変える力を持つものだ。そのような学問を学ぶことによって、お前が世の中をよくしていくのだ」

勉強する上での動機づけの質。
志の質。

平たく言えば、学ぶ目的。

それが何であるかは、勉強への意欲の高さに大きく影響すると思います。

意欲の高低ばかりではありません。

勉強の内容や人格の質、器の大きさまでも左右する気がします。

子どもに先のような話をしているユダヤ人。
ユダヤ民族から優秀な人材が輩出するわけです。

将来ある子どもたちに対して、私もユダヤ人の両親のようでありたいと思います。

そして私自身も、自分の得意分野を生かして、世の中に貢献し、少しでも世の中をよくし、自己成長する人でありたいと思います。

(2005年12月12日記)

今、振り返ってみて

理想だけではないか、という声もあるかもしれないけれど

今、振り返ってみて読んでも、付け足す必要が何もないくらい、私の教育観、仕事観を言い表しているなと思います。

「それは、理想だ。現実は違う」

そんな声も、どこかから聞こえてきそうです。

たしかに、現実はきれいごとだけではありません。

収入も大切です。
安定も大切です。
生活していくためには、現実的な視点も必要です。

でも、これらは、本人が好きなこと、得意なこと、本当にやりたいことを仕事にすれば、結果としてついてくると考えていました。

ですから、子どもに「将来、楽をするために勉強しなさい」と言ったことは、一度もありません。

後の記事でも紹介していくことになりますが、その都度その都度、子どもがやりたいと言った職業を応援してきました。

この考え方を土台にしてきた家庭教育

さて、現在二人の子どもたちは、高校受験、大学受験、就職試験を経て、就職しています。

現実、実際はどうであったか、振り返ってみましょう。

この原稿を書いた時、長女は小1、次女は3歳でした。
そこからずっと、この考え方をベースに家庭教育をしてきました。

長女アキコは、中学2年生の頃からずっとトップの成績でした。
その後、高校に入り、じりじりと順位を上げて、卒業時には上位10%に入っていました。

次女クニコは、中学1年生からずっとトップの成績でした。
高校入学時には、代表としてあいさつをしました。つまり、入学時の成績がトップだったということです。
高校時代も、1位から3位ぐらいを行ったり来たりしていました。

もっとも、これは地方の中学・高校での話です。
都会であれば、こうはいかなかったことでしょう。

私が中学生の頃は5クラスありましたが、娘たちの時代には、すでに2クラスしかありませんでした。
ですから、数字だけを大きく語るつもりはありません。

ただ、わが家として特徴的だったのは、いわゆる受験のための学習塾には通わせなかったことです。

長女アキコが習っていたのは、エレクトーン、少林寺拳法、書道、そろばんでした。
書道は、書家である祖母が教えていました。
そろばんは、妻の強い勧めによるものでした。

次女クニコは、エレクトーン、新体操、書道、そろばんに加えて、2歳から10歳まで、しちだチャイルドアカデミーに通っていました。

二人とも、ベネッセの通信教育は受けていました。
つまり、基本は家庭学習でした。

それでも、二人とも、希望する高校、そして大学に進学できました。

もちろん、ここで言いたいのは、成績がよかったことそのものではありません。
私が振り返って大切だったと思うのは、子どもたちが「自分は何をしたいのか」「何を学びたいのか」を考えながら進んでいったことです。

長女アキコが選んだ、好きなことを仕事にする道

二人とも県外、東京の大学に入学したので、親元を離れての生活です。

そして、ここからが、私にとってはとても大切なところです。

長女アキコは、2021年4月、第一希望だった会社に入社しました。
鉄道、ホテル、レジャー、観光施設など、観光関連事業を展開しているA社です。

アキコは、就職活動について、

「大学受験の時よりも、就職活動をがんばった!」

と言っていました。

まさに、本当にやりたいこと、好きなことを仕事に選んだのです。

大学3年生の時に採用が決まった時、電話口で、

「今までの人生で、まじ一番うれしかった!」

と言っていたことを、今でも思い出します。

人事部の方によれば、A社は例年3,000人から4,000人ほどが受験し、そのうち採用されるのは10人から20人とのことでした。
このことについては、いずれ詳しく記事にしたいと思っています。

次女クニコが選んだ、公認会計士への道

次女クニコは、大学生になってから、公認会計士を目指すことを決めました。

そして、1日13時間勉強し、大学3年生で公認会計士の試験に合格しました。
現在は、大手の監査法人に勤めています。

クニコも、公認会計士の試験に合格したことが、今までの人生で一番うれしかったと言っていました。

本当に伝えたいのは、成績や肩書きではなく

ここで、子どもたちの自慢話をしたいわけではありません。

本当に言いたいのは、この理想は、決して現実離れしたものではなかったということです。

少なくとも、わが家では、この考え方が子どもたちの学び方や仕事の選び方の土台になったのではないかと思っています。

子どもがまだ小さいうちは、進路や仕事の話はずっと先のことのように思えるかもしれません。
でも、親が日々どんな言葉を使い、何を大切にしているかは、少しずつ子どもの中に積もっていくのだと思います。

「将来、楽をするために勉強する」のではなく、
「自分の好きなこと、得意なことで、人の役に立てる人になるために学ぶ」。

そういう考え方を持っていても、現実の受験や就職を乗り越えることはできる。
むしろ、その考え方があったからこそ、子どもたちは自分の道を選ぶ力を育てていったのかもしれません。

親がどんな仕事観を持っているか。
親が学ぶことをどう語るか。
親が子どもの「やりたい」をどう受け止めるか。

それは、長い時間をかけて、子どもの中に静かに積もっていくのだと思います。

今、振り返ってみて、あの時の考え方は間違っていなかった。
そんなふうに感じています。

(2026年5月22日記)

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📝 自分に問いかけてみる時間

少しだけ、自分に問いかけてみます。
とくに、これから父親になる方や、子どもがまだ小さいパパにとっては、今すぐ完璧な答えを持つ必要はないのだと思います。
ただ、自分なりの言葉で考え始めておくことには、大きな意味があります。

自分は、子どもに「なぜ勉強するのか」と聞かれたら、何と答えるでしょうか。

「いい学校に入るため」
「いい会社に入るため」
「将来困らないため」

それも、もちろん間違いではないと思います。

でも、それだけでは物足りないと、私は考えます。

学ぶことは、自分の可能性を広げること。
できなかったことができるようになること。
知らなかった世界に出会うこと。
自分の好きなことや得意なことを磨いて、人の役に立てるようになること。

そんなふうに伝えられたら、子どもにとって勉強の意味は少し変わってくるように思います。

また、親の仕事観も、子どもに静かに伝わっていきます。

「楽な仕事がいい」
「安定していればいい」
「給料がよければいい」

そんな言葉を、親が何気なく口にしていることもあります。

もちろん、収入や安定は大切です。

けれど、それだけで仕事を見てしまうと、子どもの職業選択の幅を、知らず知らずのうちに狭めてしまうこともあるのかもしれません。

自分は、どんな仕事を「よい仕事」だと思っているのか。

子どもには、どんなふうに働き、どんなふうに人の役に立つ人になってほしいのか。

一度、静かに考えてみたい問いです。

📝 簡単なワーク

今日は、次の3つの問いを、短くメモしてみます。

1つ目。

子どもに「どうして勉強しなきゃいけないの?」と聞かれたら、自分は何と答えるでしょうか。

きれいな答えでなくて大丈夫です。
まずは、今の自分の言葉で書いてみます。

2つ目。

自分は、どんな仕事を「よい仕事」だと思っているでしょうか。

収入。
安定。
やりがい。
人の役に立つこと。
好きなことを生かせること。
成長できること。

どれを大切にしているのか、少し整理してみます。

3つ目。

子どもに、学ぶことや働くことについて、どんな言葉を残してあげたいでしょうか。

たとえば、

「学ぶことは、自分の可能性を広げることだよ」

「好きなことや得意なことを大切にして、人の役に立てる人になってほしい」

「楽かどうかだけでなく、やりがいや誇りを持てる仕事を選んでほしい」

こんなふうに、一文で書いてみます。

大事なのは、立派な言葉にすることではありません。

親自身が、自分の中にある考えを一度言葉にしてみることです。

言葉にしておくと、日々の何気ない会話の中で、子どもに伝えられる瞬間がきっと出てきます。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

『パパの子育て奮戦記』では、若い頃に書いた子育て日記をもとに、今の視点から振り返りながら綴っています。

子育ての中の小さな出来事が、どこかで誰かの気持ちを少しだけ軽くしたり、温かくしたりできたら嬉しいです。

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この後も、プレパパや子育て中のパパに向けて、子どもとの関わり方、学び、しつけ、家族の時間について、体験に基づいて綴っていきます。

この後も、小さな子どもに「学ぶ」価値をどう伝えるかなど、体験に基づいた話を綴っていきます。

この記事は、2005年12月12日のSo-netブログ原稿「なぜ勉強するのか」をもとに整えた再構成エディションです。

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