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子どもの苦悩「遊びたいのに誘えない!?」

本当はいっしょに仲間に入りたいのに、「入れて!」と言えない子。引っ込み思案な子というよりは、実は誰しもその過程を通ります。今は活発なアキコですら、幼稚園の時トイレに行きたいのに保母さんに言えずに幼稚園に行くのをしぶったことがありました。親は、ステップを踏んで、サポートする必要があります。

親としては、遊びに入りたいのに言えない子に声をかけるあたたかい思いやりのある子に育ってほしいし、また一方で勇気を出して自分から誘う強さも育ってほしいところでしょう。
次に紹介するのは、そうした遊びを巡る問題についてのわが家の事例です。

遊びたいのに誘えない!? 2006.5.16 1698-193

今日は比較的早く帰宅できた。
着替えて書斎にいると、階段を上って妻が入ってきた。なにか沈んだ表情である。

沈んだ表情の妻の話を聞く

妻「ねえ、ちょっといい。」
私「どうした?」
妻「アキコ(小2)は、火曜日は習い事がなくて、比較的空いているじゃない。だから、アキコは、火曜日は自分から『ねえ、今日うちに遊びに来ない。』って、いつも友達を誘うんだよ。」
(学校にいるうちに)
私「(積極的で)いいじゃないか。
それで。」

妻「それで、今日遊びに来たAさんとBさんのお母さん(Aさんはアキコと同じクラス、Bさんは保育園でクニコと同じクラス。AさんとBさんは姉妹である。我が家と似た家族構成なのだ。)が教えてくれたんだけど、『アキコちゃんが来ていいって言った人しか、(アキコの、つまり我が家に)遊びにきちゃいけない。』ということになっているんだって……。」

私「何が問題なんだ? うちに呼ぶのだから、アキコが来ていいよって言った人しか来れないのは、当たり前だろ? それとも、他にうちに遊びに来たい人がいるのに(それを知っていて)アキコが寄せないってか?」

妻「アキコは、『わたしも入れて。』て言えば、いれてあげると思う。」

私「そうだろ。アキコが遊びたい人を『遊びに来ない?』って誘うのは、当然だろう。もし、自分も一緒に遊びたいんだったら、『わたしも入れて。』って言えばいい。おれの子が「本当は遊びに行きたいのに言えない」んだったら、『わたしも入れて』っていいなと言うよ。」

妻「(少し笑顔になって)そうだわよね。現にAさんのことは、『わたしも遊びに行って言い?』と電話をかけてきて、遊びに来るわね。  Cさんとこは、『うちの子が遊びたいといっているんですけど……』と言ってくるわ。」

私「そうだろ。 なんかアキコが仕切っているというか、親分みたいになっているのが気になるってか?」
妻「うん。」

私「でも、だれも『今日、遊ぼう!』って音頭をとる人がいなかったら、どうなるんだ? 誰も遊べないじゃないか。親分というか、遊びに誘う人っというのは、大事だよ。
(それなら、)おれだって、小学生の時、いつも遊びに誘う人『親分』(?)だったよ。」
妻「そうね。」(さらに笑顔になっていく。)

私「学校で休み時間に遊ぶんじゃなくて(それならみんなに声をかけることはある程度大切だ)、家に帰ってからの遊びだろ。アキコが一緒に遊びたい人に声をかけるというのは、当たり前だと思うよ。」
妻「でも、みんなの前で誘っているみたいで、誘われない子はさびしいみたいよ。」

私「小学校2年生では、そこまでまだ知恵が回らないんだろ。それに、こっそり誘う方が問題だぞ。オープンに誘っていれば、それを聞いていた他の子が『私も遊びに行きたい。』とか言えるけど、こっそりではそのチャンスがなくなるよ。それにこっそり誘っていてもわかるものだよ。かえって『私も入れて。』って言いにくい……。」
妻「そうね~。」

私「少なくとも、アキコだけが問題ということはないと思うよ。本当は自分も遊びたいのに言えない子は、『私も入れて。』とか言わ(え)ないことは問題だよ。 後でアキコと少し話してみるよ。」

妻「そうね。(話し始めに比べてずっとリラックスした表情)何かと情報が入ってくると、かえって困るわ~。」
私「何も知らないゆえの幸福というのはよくないと思うよ。もろいから。情報はたくさん入ってきた方がいいよ。」

アキコにこの件について聞く

さて、アキコと一緒に入浴して、この件について聞いてみた。

私「~アキコ、今日は誰が遊びに来たの。」
アキコ「Aちゃん、Bちゃん、Cちゃん、Dちゃんの4人。」

私「そうすると、みんな女の子だね。学校では、いつも何て言って誘ってる。」
アキコ「『今日、遊びに来れる?』って聞いてる。」

私「断られる時もあるでしょう。そう言うときは、どうしているの?」
アキコ「他の人を誘っている。」

私「なるほど。 アキコが誘っているとき、周りの子で自分も一緒に遊びたそうにしている子はいないかい?」
アキコ「わかんない。」

私「わかんないか。 もし一緒に遊びたそうな子がいたら、アキコが『○ちゃんも遊びに来る?』って誘ってあげるといいよ。本当は行きたいのに、はずかしくて言えない子もいるかもしれないからね……。」
アキコ「うん。」~

妻と再び会話する

入浴後、妻にこの会話のことを話し、

私「アキコに手落ちがあるとすれば、行きたくても行きたいと言えない子に気づいて声をかけていないことだから……。」と言った。

妻「お父さんは、さすがうまいね~。」
(妻はさすがほめるタイミングがうまい。)

親の願いと対応

親としては、あたたかい思いやりのある子に育ってほしいし、また一方で勇気を出して自分から誘う強さも育ってほしい

アキコは、幼稚園の時トイレに行きたいのに保母さんに言えずに幼稚園に行くのをしぶったことがあった。私自身小学校低学年の時など、「入れて。」と言いたくても、なかなか言えないこともあった行きたくても言えない子にとっては、深刻な問題だろう。

アキコの場合、「トイレが近くて、トイレに行きたいのだけれど、なかなか本人が言えないのでよろしくお願いします。」というのを、保母さんに連絡帳で伝えた。おかげで、保母さんから「アキコちゃん、トイレに行きたいときはいつでも行っていいんだよ。」と言ってもらい、アキコは安心してトイレに行けるようになった。

心配ならCさんのお母さんのように、「本人の代わりに言ってあげる」というステップがあっていい思う。(Cさんのところは、今は本人が言う場合もあるという。)
電話をかける前に、母親を友達に見立てて誘う練習をするステップがあってもいい。あるいは、電話をかけてあげて、途中から本人に代わるという方法もある
そして、慣れてきたら言葉による促しだけで、本人がかけられるようにすればよい
(これらはソーシャルスキルトレーニングと呼ばれる。)

もちろん、アキコにもあたたかい思いやりのある子に育ってほしいので、家での遊びに限らず、遊びたそうにしている子に気がついたら声をかけてあげられるようになってほしいと思っている。

もっとも場所が家の場合、一緒に遊べる人数には限界があると思うのだが……。

付記

①ソーシャルスキルトレーニングという場合、「入れて」といって仲間に入るスキルばかりでなく、断り方が一つ大事なポイントです。相手を傷つけないような断り方で、しかもはっきりと断るという……。

遠い話ですが、交際を断って異性に殺されるケースが、最近よくあるので心配です。

家庭で王子様、お姫様という形で、何でも要求が通るという育児をしていると、要求が通らない現実にぶつかったとき、簡単に殺したりする子に育つのかも知れないと危ぐしています。

社会全体がもう少しあたたかく、強くなってほしいと願っています。そのために、このサイトが少しでも役立てればいいなと思っています。

②人とのつきあい方も、そうして少しずつ学んでいくんだと思います。
まずは、母親と二人での遊び。つぎに、母親を媒介としつつ、年上の優しい・仲のよい姉や兄、友達との遊び、そして仲のよい同年齢の友達同士での遊び……。

一つずつ乗り越えられるように、サポートしていく必要があると思います。 (2006-05-20 11:50) 

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