《読み始める前に》
娘と一緒に遊ぶ、その目的は何でしょうか。遊ぶことで、体力をつけたい。知的に賢くしたい。社会性を身につけさせたい──目的はいろいろあります。今回のように、「娘にゲームで勝って尊敬されたい」という思いも、実は親として自然な気持ちかもしれません。 でも、「勝って尊敬されたい」ばかりを優先すると、子どもにとっては「パパと遊んでも負けてばかりでつまらない」になってしまうことも。 では、どうしたらいいのでしょうか?
パパの子育て奮戦記:第12号
長女アキコ(小1・6歳)、次女クニコ(2歳)、ママ、パパ(私)、祖母(70歳)
絵本から始まる、夕方のふれあいタイム
この日の夕方、帰宅するなり、次女クニコにせがまれて絵本の読み聞かせ。
いつもなら夕食後なのですが、この日はすぐに読んであげました。
続いては、長女アキコに誘われて、ビーチボールバレーと室内野球。
夕食の前後もずっと娘たちとの“遊びタイム”が続きました。
パパに連敗、ママにも連敗したアキコ
そして、夕食後──
アキコと一緒に立体四目並べに挑戦しました。これは、縦・横・斜めに加え、立体的な縦や階段状の並びも加わった、なかなか頭を使うゲームです。
最初のころは自分の手しか見えていなかったアキコは、すぐに負けていました。最近は、相手の動きを見ながら防御もできるようになり、すぐには負けなくなっていたのですが──この日は15分ほどで、私に10連敗。
「あーちゃん(私の母)とか、ママとかとやって、もう少し修行してからパパとやったら。」
と私が言うと、アキコはママと対戦を始めました。
ママも本気モードで対戦したらしく、妻もアキコ相手に、あっという間に5連勝しました。
私が「勝つばかりが教育じゃないぞ。負けてあげるのも教育だぞ。」と、先ほど自分が10連勝しながら一面で思っていたことを言ってみました。
妻「だったら、パパが負けてあげたら。」
こう言って、妻がまた勝ったところで、長女は「今度はあーちゃんとやる。」と言って、向こうの部屋にいるあーちゃんを呼びに行きました。でも、
あーちゃん「こんな細かいの、あーちゃんよく見えない。」
と断られていました。
ふと立ち止まって考えると…
以上が顛末なのですが、振り返ってみると、果たしてこれでよかったのだろうかと思います。
娘とゲームしているのは、ふれあいのためであり、一緒に楽しむためです。
果たして負けてばかりのアキコは、楽しかっただろうかと…。
自分の勝ちたい心理を分析してみると、「娘に『お父さんはすごい。強い。』と尊敬されたい」という思いがあったことに気づきました。
ゲームを通して
・「相手の動きをよく見ていないと勝てない」という学びを促したい
・「娘の知的な能力を高めたい」という思い
があることにも気づきました。
つまり、娘と純粋にふれあいを楽しみたいという思いばかりではなかったのです。
ここまで振り返って、私は大事なことに気づきました。
それは、ゲームで言えば、相手の手を読まずに、自分の思いだけで打っていたこと──。
それでは、娘との“信頼を深めるゲーム”には勝てません。
アキコにしても、負けてばかりでは面白くないはずです。 今後は、ハンデ戦にしたり、教えながら差したりして、少しずつ強くしてあげようと思います。
そうすれば、尊敬も保てるし、なにより“教えること”が、ふれあいと絆につながります。
今、振り返ってみて
この日以降も、立体四目並べは、しばらくわが家のブームとなりました。
私自身、少しだけ手加減して(気づかれないように)勝たせるようにしたのが良かったのか、アキコの思考力が伸びたのか──だんだんと勝ったり負けたりが交互になり、私たち親子は“ちょうどいい勝負”を楽しめるようになっていきました。
ところで、私は、小学校の特別支援学級の担任を12年間やりました。
そこでは、「負けることに対して、非常に抵抗感のある子ども」もいました。負けるとパニックになるのです。
私はどうしたかというと、わざと負けてあげました。すると、その子は満足してゲームを面白がるのでした。
そのうえで、だんだん何回かに1回は、私が逆に勝つようにしていったのです。
こうすることで、徐々にその子は、次第に“負ける経験”も受け入れられるようになっていったのです。
親が子どもと遊ぶ第一の目的は、楽しい時間を共有して、親子の絆をつくることでしょう。
そして、
もう一つの大事な目的は、遊びを通して子どもを成長させること。例えば社会性(相手のことを考えずに、自分だけ楽しめればいいでは困りますし、負けてパニックになるのも困りますよね!)を育てることです。
だとすると、「勝って尊敬されたい」気持ちをセーブして、時には負けてあげることもやっぱり必要だと思います。
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「あったかい家族日記」は、長女アキコ(2025年7月現在27歳・既婚)と次女クニコ(23歳・公認会計士)の成長を、パパの視点で約20年間にわたり綴った実録子育てエッセイです。
*二人が幼児だった頃から大学入学、そして結婚前後までの家族の日々を記録し、累計アクセス数は400万を超えました。
*七田チャイルドアカデミー校長・七田眞氏にも「子育てに役立つブログ」として推薦された本連載は、So-netブログ閉鎖(2025年3月)を機に、「記録」と「今の視点」を重ね合わせて再編集した〈日々の記録に、“今”を添えた子育てエッセイ〉として、noteで再連載しています。
*この文章は、2005年6月6日にSo-netブログで公開された『ゲームに勝って娘に尊敬された私』に、「今、振り返ってみて」を加筆した再構成エディションです。