《読み始める前に》
「遊びの中で、どこまでルールを守らせるか?」 これは、子育て中のパパ・ママにとって意外と悩ましいテーマです。 今回は、パパと娘の“室内野球”を通して見えてきた、楽しみながら社会性を育むコツについて綴ります。
パパの子育て奮戦記:第16号
長女アキコ(小1・6歳)、次女クニコ(2歳)、ママ、パパ(私)、祖母(70歳)
最近の流行り、親子室内野球
この日、仕事から帰るとすぐに、長女アキコに誘われて室内野球をしました。
いつものように、プラスチックバットとスポンジボールを使って、六畳の部屋での親子ふれあい遊びです。
チェンジ・攻守交代のルールは──フライやライナーでキャッチされてアウトになるか(ワンアウトで交代)、またはアウトにならなくても5回打ったら交代。 以前は、アキコに好きなだけ打たせて、その姿を見て私も楽しむスタンスでしたが、いつの間にか私も同じ条件で楽しむというスタンスに変わりました。
投げ方ひとつで、学びの機会に
アキコは少しせっかち。バッターがキャッチャー役も務めるのですが、返球が雑になることも多く、ゴルフのように転がしたり、変なところに投げてしまうこともしばしば。
あまりに変なところの時は、「ダメだよ」と注意したり、逆にアキコがピッチャーのときにわざと変なところへ投げて大変さを体でわからせるようにしています。
遊びの中で「社会性」を教える
今日の“もめごと”は、5回の打数に何を含めるか──という話。 キャッチャーゴロのような当たりを「打数にカウントするかどうか」で、意見が割れました。
本当のところ、アキコの言い分を全部受け入れても私としてはまったく困りません。 そもそもアキコにずっと打たせても、私は楽しいのですから。でも、パパとしては「ルールを守って遊ぶ楽しさ」や、「交渉の大切さ」も知ってほしい。
だから、ちょっと不満を言ってみたり、わざとごねてみたり──そうやって、適度に“社会性(交渉力を含む)”を育てようとしているのです。
「交渉の訓練」は、遊びの中にこそある
ファール気味のボールで「はい、5回打ったよね。交代」と、パパが言ったら、
アキコは「今のはダメ。違う!」と言って、アキコは怒ってきました。
私は、わざとすぐには折れなかったのですが、「だったら、パパの時も同じようにするよ。」と言って、アキコの言い分を認めました。
これって、まさに“交渉の訓練”になりますね。パパは優しいだけじゃない、言うことは言うというスタンスで、一緒に遊ぶ中で、交渉力や社会性を育てていこうと思います。
今、振り返ってみて
あの「室内野球」、思い返すと、本当によく続きました。アキコが小学校高学年になる頃まで、ずっと一緒に楽しんでいたのです。 本当に楽しかったなー!
最初は、「ヒットを打ててうれしい!」という楽しい体験をたくさん積ませることが中心でした。打ちやすいところに投げてあげて、「ナイスヒット!」と声をかける。その喜ぶ顔を見るのが、パパとしての私の何よりの楽しみだったのです。
でも、やがて攻守交代をして、お互いフェアな条件で遊ぶようになってきました。まあ打つ方が楽しいわけですが、友達と遊ぶようになることを想定すると、 守る役も果たすことができないといけません。順番に交代して、親子で楽しむようになれば、きっと友達とも同じように楽しむことができるはずです。
友達と遊ぶようになったとき、ルールを守ることや順番を守ること──こうした“社会性”はどうしても必要になります。私は、ただ一緒に遊んでいたようでいて、その力を育てたいという思いが、どこかにありました。
親子の間だからこそ、ルールの解釈をめぐってのやり取りも、丁寧に向き合えます。簡単に譲るのではなく、公正な視点を持ちながら伝えること。これが、将来の人間関係にもつながる大切な訓練になると信じていました。
一緒に遊びながら、子どもの成長をサポートする──これは親の役割のひとつです。
そしてもうひとつ、命を守ることも忘れてはならない責任です。六畳の部屋とはいえ、バットやボールがある以上、いつも安全への配慮もしていました。
さて、驚くべきことに、アキコは中学生になると紅一点で野球部に入り、市内大会で約30年ぶりの優勝メンバーになりました。大学では女子ソフトボール部に所属し活躍しました。
結婚相手は、なんと同じく少年時代に野球に打ち込み、市内大会で優勝したこともある男性でした。今では夫婦でプロ野球観戦に出かけるのが共通の趣味です。
当時は予想もしなかった展開ですが、あの六畳の室内野球が、娘の人生に小さな種をまいていたのかもしれませんね。
追伸
退職後、自宅で発達凸凹な子ども専門の学習塾を運営しています。
最近、6年生の男児と4年生の女児と、学習の終わりに最近この<室内野球>を楽しんでいます。これを楽しみに塾に来るぐらい、二人ともハマっています。
スポンジボールとプラスチックのバッドは、娘たちと使った道具ですが、同じように楽しめています。
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「あったかい家族日記」は、長女アキコ(2025年7月現在27歳・既婚)と次女クニコ(23歳・公認会計士)の成長を、パパの視点で約20年間にわたり綴った実録子育てエッセイです。
*二人が幼児だった頃から大学入学、そして結婚前後までの家族の日々を記録し、累計アクセス数は400万を超えました。
*七田チャイルドアカデミー校長・七田眞氏にも「子育てに役立つブログ」として推薦された本連載は、So-netブログ閉鎖(2025年3月)を機に、「記録」と「今の視点」を重ね合わせて再編集した〈日々の記録に、“今”を添えた子育てエッセイ〉として、noteで再連載しています。
*この文章は、2005年6月8日にSo-netブログで公開された『娘と一緒に遊ぶ中で適度に社会性を育てる』に、「今、振り返ってみて」を加筆した再構成エディションです。