■「ちょっと帰るね」——ふいに届いた連絡
この3月、次女が大学を卒業しました。在学中に公認会計士の資格を取り、4月からは都内の監査法人に勤めています。
「最初の数ヶ月はとにかく忙しい」と聞いていたので、当分は帰省できないだろうと思っていたのですが——
6月のある週末、ふいに「ちょっと帰るね」と連絡が。
わずか2日間でしたが、久しぶりに家族3人が顔を揃える時間ができました。
■いつもの寿司屋で、さりげない“初任給”の一言
新幹線の燕三条駅まで迎えに行った帰り、いつもの寿司屋へ。そのまま、妻と私、次女の3人でテーブルを囲んで、他愛ない話をしながら寿司をつまんでいました。
さて、お会計。そろそろ行こうかと席を立ちかけたその時、
「私が払うよ」と、次女。
一瞬きょとんとして、それから妻と顔を見合わせてしまいました。
びっくりしたのと、しみじみ嬉しかったのとで、ちょっと言葉が出てこなかったくらいです。
「同期がみんな、“初任給で親を寿司に連れてった”とか、“焼肉ごちそうした”とか言ってて。私も、早くやりたいって思ってたんだよね」
そう言って笑う次女の横顔を見て、ふと、自分が若い頃、初めてのボーナスで両親に寿司をご馳走した日のことを思い出しました。
「それなら最初に言ってくれたらよかったのに。もっと味わって食べたのに」
「ていうか、もっと高いやつ頼んだのに(笑)」
そんな、ちょっと悔しくて、でもやっぱり嬉しい——
何ともいえない温もりに満ちたランチでした。
■子どもたちの姿が、未来への願いに変わる
こうして子どもたちが大人になり、自分の足で立ち、そして親のことを少しずつ気づかってくれるようになる——
その姿を見ると、心から嬉しくなると同時に、自然とこの国の未来にも思いが向きます。
次女は、今まさに新しい社会の中でがんばっています。
長女は結婚し家庭を築きながら、大学時代に借りた奨学金を今もコツコツ返しています。
彼女たちのような若者たちが、これからの日本を支えていく。
そうと思うと、やはり願わずにはいられません。
——働く若者や、これから社会に出る子どもたちへの支援が、もっと充実しますように。
そんな思いを胸に、私は今回の参議院選挙でも、しっかりと一票を投じました。
■今、振り返ってみて
あの日の寿司屋での出来事は、私にとって何よりの「卒業証書」のような時間でした。
小さな背中だったあの子が、いつの間にか一人前の社会人として、自分たち親にささやかな「ありがとう」を返してくれるようになった——。
親として、こんなに幸せな瞬間があるのだと、しみじみ思います。