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父親を軽んじていた私を180度変えた「内観」

親に感謝する子に育てる その3

前号で、「親に感謝する子に育てる方法」として、次の三つをあげた。

第一に、親自身が自分を育ててくれた親に感謝すること。親自身がお手本を示すこと。

第二に、夫あるいは妻として、妻の母親としての働きあるいは夫の父親としての働きー仕事・家事労働等ーに対して感謝すること。少なくとも決して軽んじたりバカにしたりしないことだ。

第三に、実際に年齢相応の家事を分担させること(お手伝いをさせるようにすること)

父親にさして感謝の念をさして持てなかった自分

しかし、このうち一つでも欠けていたら危うい。

たとえば、私自身、第二のことが十分ではなかった。母親が父親の悪口を言ったり軽蔑したりする傾向が少なからずあった。

「おかげで」と責任転換するわけではないが、子どもの私は(成人してからも)、何かと母の味方ばかりして一緒になって父を責めたり軽蔑したりすることすらあった。父に対して、さして感謝の念を持た(て)なかったのである。

仕事から遅く帰ってきてさらに家事をしている母に対しては、私は感謝の念をもてた。だから、どうしても母親寄りになりがちであった。しかもその母が夫である父親を責めたり軽蔑したりすることがあったので、私自身もどうしても母親と同じように父親のことを軽視するようになってしまいがちであった。

父親に対する態度を180度変えた内観

そうした父親への態度が180度変わったのは、内観法に出会ったからである。
内観法というのは、「お世話になったこと」「お返ししたこと」「迷惑をかけたこと」とい3つの視点で自分の人生をふり返っていくものである。

普通は母親から順番に調べていく。まず、母親に対して行ったとき、お世話になっていると思ってはいたが、これほどお世話になっていたとは……!と母親への感謝の念が深まった。 次に、父親に対して内観してみて、ようやくいかに父にお世話になってきたか気づいた。

「父に感謝する子108号」から一部引用する。

それは12月の末。寒い雪の降る夜のことでした。
銀行員であった父が夜9時頃「帰ったれ~。」と言いながら帰宅したシーンです。
小学生だった私は、「お父さんだ!」と思い、すぐに玄関へ行きました。そして、「お帰りなさい。」と言いながら、融けた雪でさらに重くなった黒いカバンを引きずりながら居間に運んでいました。

そのシーンが思い出された瞬間。
「そうなんだ! 父が毎日毎日遅くまで働いてくれたおかげで、僕は大学まで行け、就職もできたんだ! 父が毎日毎日40年近くも働いてくれたおかげなんだ!」と、ようやく深くお世話になったことに気づいたのです。そのとたん、涙が溢れ出てきました。

父に対して、さして感謝の念を持たなかった自分。それどころか何かと母の味方ばかりして一緒になって父を責めたり、軽蔑したりすることすらあった自分。その父がいなければ、現在の自分はなかったのに……。
その大恩ある父に対して、感謝の念を抱かず、それどころか軽蔑すらしていた自分。そのことに気づいたとき、涙が止まらないくらい溢れ出て、奥底から大きく変わった自分がいました。

それから父への態度が180度変わりました。母の味方ばかりしていたのが、父の味方もするようになり、感謝の念で言葉遣いも自然と優しくあたたかくなりました。
退職して朝のゴミ出しなどしていた父に「ありがとう。」と伝えたり(それまでは、「僕がかせいでいるんだから当たり前、適度な運動になって健康にいいだろう」などと思っていました。)、寿司を食べに連れて行ったり、おこずかいを渡したりとお返ししようと自然に体が動きました。

実は、その父は8年前に急死しました。結納が終わり、結婚を1カ月後に控えた時期でした。しかし、内観をしていたおかげで、父に感謝しており、それまで優しく接していたので、後悔の念はありませんでした。(……以上、一部抜粋)

(次号へ続く)

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