子どもは自立に向けて成長していきます。たとえば、自分で着替える、自分で靴を履く、自分でランドセルをかつぐ…。これらが一人でできるようにサポートすることが、親の役割の本筋です。
ところが、親(祖父母)の「いつまでも幼いままで(かわいいままで)いてほしい。かわいがっていたい。」という願望が、子どもが自分で挑戦し、できるようになることを妨げている、これから紹介するようなケースがあります。
このケースをもとに、親の役割について考え直すヒントになれば幸いです。
★親の本当の役割とは何か?! 2005.9.23 第92号
◆1 ある1年生が何でもペースが遅い原因
もう20年も前の話である。(2005年9月現在)
当時小学校1年生を担任していた、中年のある女の先生がこうこぼしていた。
「A君は、ボヤーとしていて何でもペースが遅いのよね。困るわー。でも、原因がわかったの。A君は初めての長男で、おじいちゃんとおばあちゃんがそれはもうかわいがって……。朝、登校しようと玄関へ行くと、靴はスーと出てくる。後ろからランドセルはスーとしょわせてくれる。こんな調子なのよねー。……」
子どものはそれぞれの時期に応じて発達課題がある。それを上手に乗り越えていけるようにサポートすることが親の役割だ。自分で靴を履く。自分でランドセルをしょう。自分で後片付けをする……。
この場合で言えば、自分で靴を履く。自分でランドセルを担ぐなどは当然自分でやるべき課題だ。
(実際はずっと以前にクリアーしているべき課題だ!)
それを祖父母がやっているものだから、子どもはその課題に挑戦できずにいる。その結果、学校で何でもペースが遅いと担任の先生から言われ、おそらくは本人もしんどいのではないだろうか。家では何でも祖父母がやってくれるのに、学校では自分でやらなくてはならないわけだから。
◆2 親の役割の本筋とは
何がA君の成長を止めているのか? それは、祖父母の対応である。
では、祖父母にそのような対応を取らせている原因は何か?
「親が変われば子どもも変わる~次女編①~」でも書いた、親の「いつまでも幼いままで(かわいいままで)いてほしい。かわいがっていたい。」という願望。
言葉は悪いが、「子どもをペット(着せ替え人形)としてかわいがっていたい。」というような願望であろう。(正直言って、私の中にもしっかりとある。だから、祖父母の気持ちはよくわかる。)
これは親の願望の一部であって(それも成長させたいという願いに比べればかなり低いレベルの願望)、親の役割ではない。(正確に言えば、一時期だけ必要な親のヘルプである。)
その時々のわが子の発達課題を乗り越えさせるべくサポートすることが、親の役割の本筋だ。
わが子が本当にかわいいなら、わが子が将来しんどくなるような、自分のことが自分でできない弱い子に育ってしまうような愚を犯すまい。
あえて言おう、子どものペット化は止めよう! 自戒を込めて。