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「わざとじゃない」で済ませない──謝る心を育てた夜

《読み始める前に》

寝る前、ちょっとした不注意で妹が泣いた。
「わざとじゃない」と固まる長女。
この夜、わが家は“謝る”をどう教えたか──夫婦で足並みをそろえた一件です。

パパの子育て奮戦記:第39号
長女アキコ(6歳)、次女クニコ(3歳)、ママ、パパ(私)、祖母(69歳)


事件が起きたのは就寝前

就寝直前、1階の居間。クニコは虫刺されでふくらんだ足に、ママが薬を塗っているところ。
アキコはすぐそばで、私と横になってパルキッズのDVDを見ていました。
そのとき、アキコが何気なく動かした足がクニコの目の近くに当たり、クニコが泣き出しました。

ママの注意と、アキコの沈黙

見ていたママは「アキコ、危ないよ。目に入るところだったよ」と注意。
続けて「クニコに謝らないといけないよ」と促しましたが、アキコは無反応。

「自分は『(クニコに)謝らなきゃ絶対許さない』ってよく言うのに、どうして自分は謝らないの」と重ねても、黙ったままでした。

ママの“宣言”で空気が動く

クニコの薬を塗り終えたママは、「じゃあ、アキコには薬を塗ってあげないよ。さようなら」と宣言して2階へ。(アキコも医者から塗り薬をもらっています)
その瞬間、アキコは泣き出しました。

薬も塗らず、この嫌な気持ちを引きずったまま(ママもアキコもクニコも)寝かせるわけにはいかない。
私は調停に入ることにしました。

パパの調停:「わざとじゃない」と「どうする?」

私は静かにたずねました。
「ぶつかったの、気づかなかったの?」
「わざとじゃなければ、謝らなくてもいいと思っているの?」

でも、泣いてばかりでなかなか話が進みません。
うなずきの仕草でようやく、「わざとじゃない。でも当たってしまったのはよくない」と思っているのがわかりました。

「だったら、どうしたらいい?」と聞いても、泣いてばかりで話が進みません。
先にママとクニコは「遅いから寝るね」と2階へ行ってしまいました。

二階での続き:涙の理由を言葉に

私とアキコも2階の和室へ。
「アキコは、クニコに『謝らなきゃ絶対許さない』ってよく言ってたよね。だったら自分も謝らないとね」
「泣いてばかりじゃ、わからないよ。」
「どうして泣いてばかりいるの?」

アキコは「ママに叱られたのが悲しい」とポツリ。
私は「ママに叱られて悲しかったんだね。その気持ちはわかるよ」とまず受け止めました。

和解:「ごめんね」と薬タイム

ほどなくして、寝ているクニコに向かって小さな声で「ごめんね」。
「眠っていても大丈夫伝わるよ。もう一度言ってごらん」と促すと、はっきりと「ごめんね」。

ママはアキコを抱き上げ、「友だちでも、わざとじゃなくても当たったら『ごめんね』って言うんだよ」と伝え、
「どれどれ薬をつけてあげるからこっちへ来なさい」と優しく塗ってくれました。

ようやく家族4人、気持ちよく就寝できました。

学校で見かける同じ光景から

私の職場(学校)でも、「わざとじゃないもん」と謝れない場面をよく見ます。対応はやはり同じです。
家庭での小さな積み重ねを通して、家庭の外でも謝れる子に育っていく──そう感じた出来事でした。

***************

今、振り返ってみて

あの夜の出来事を振り返ると、「家庭は人間関係(ソーシャルスキル)を学ぶ最初の学校」だとあらためて思います。
家庭で妹に素直に謝れない子が、学校で同級生にスムーズに謝れるかといえば、やはり難しいでしょう。

家庭という場は、親からの愛情を受け取りながら、人との関わり方を少しずつ学んでいく場所です。社会のルールは、自然に身につくようでいて、実際は一つひとつ教え育てていく必要があるのです。

今回のケースでいえば、たとえ「わざとじゃない」としても、結果として相手を傷つけてしまったなら「ごめんね」と伝える必要がある。これは、社会でも共通する大切なルールです。

ある家庭では、スキンシップの手段として、きょうだい同士で叩き合いをしていました。ママもそれを肯定していました。しかし、社会では、叩くという行為は、相手の反発を招き、スキンシップの手段として通用しません。家庭では通用したことが、友達・社会では通用しないということになります。実際、この子は、友達に敬遠されていました。

だからこそ、家庭でのルールは社会のルールと連動している必要があります。実際の社会でも通用するルールを教えなくてはいけないわけです。

そして、それを教える方法は2つあります。
ひとつは、今回のように場面ごとに教えること。
もうひとつは、親自身が「わざとじゃなくても悪かったら謝る」姿を見せることです。
親が模範を示せば、子どももそれを真似る形で身につけていくのだと思います。

📝 自分に問いかけてみる時間

  • あなたの家庭のルールは、社会でも通用するものになっていますか?

  • 子どもに教えるとき、自分自身も模範を示せていますか?

  • 「わざとじゃないけど悪かった」と思ったとき、あなたはきちんと謝れていますか?

📝 簡単なワーク

1. 「このままではよくないな」と思う子どもの行動を1つ思い浮かべてみましょう。

その行動が外の社会で通用するか、またはどんな問題になりそうかを考えてみます。

2. それを家庭でどう伝えるか──声かけの方法や、親が見せるお手本を1つ考えて実行してみましょう。

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「あったかい家族日記」は、長女アキコ(2025年8月現在27歳・既婚)と次女クニコ(23歳・公認会計士)の成長を、パパの視点で約20年間にわたり綴った実録子育てエッセイです。
*二人が幼児だった頃から大学入学、そして結婚前後までの家族の日々を記録し、累計アクセス数は400万を超えました。
*七田チャイルドアカデミー校長・七田眞氏にも「子育てに役立つブログ」として推薦された本連載は、So-netブログ閉鎖(2025年3月)を機に、「記録」と「今の視点」を重ね合わせて再編集した〈日々の記録に、“今”を添えた子育てエッセイ〉として、noteで再連載しています。
*この文章は、2005年7月1日にSo-netブログで公開された『夫婦協力して子供を叱る』に、「今、振り返ってみて」を加筆した再構成エディションです。

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