「道理」だけでは、子どもは動かない
子どもを叱るうえで、「道理」があるのは必須である。
しかし、いくら「道理」が通っていても、
子どもとの関係性ができていなければ、
それは「糠に釘」・「のれんに腕押し」状態となる。
子どもは親の愛を感じたとき従う 2009.5.2
「ストーブのそばで着替えながらじゃなくて、テレビから2m以上離れて見なさい!」と叱責するも、反発してなかなか自分からテレビから2m離れて見れないアキコ(小5)、そしてクニコ(小1)。どうしたらそんな子ども達を動かせるか!?
親の言うことをなかなか聞けないアキコ 前記事よりー
私「アキコ、テレビは2m以上離れて見なきゃ。(眼に悪いよ。)ほら、離れて見なさい。」
こう言われても、あたたかいストーブのそばから動こうとしないアキコ、そしてクニコ。
同じことを繰り返し言っても、動こうとしない。
私「(意を決して)だったら、テレビを消すよ!」(パチンとテレビを消す。)
アキコは少しムッとして、テレビを付け返す。
私はもう一度テレビを消す。
アキコはまたテレビを付け返す。
私はもう一度テレビを消す。
結局アキコは、むっとしてストーブのそばから離れ、ようやく2m以上離れてテレビを見始めた。そして、クニコも。
このようなことが日を置いて繰り返された。
こちらは、アキコやクニコのためを思って(視力を落としたくない)注意しているのに、反発される。親としては、心地よいものではない。
それならいっそのこと放っておこうかとも考える。
がしかし、やっぱり眼は大切、放っておけない。
わが子も、そんなに近くでテレビを見ては眼によくないぐらい、百も承知しているはず。
しかも、アキコやクニコがちょっと移動すればいいだけなのだ。
さて、どうしてものか。
私は少々困っていた。
アキコの急な願いを受け入れる私
そんなある日のこと。
この日は土曜日で、家族5人そろっての夕食と団らんである。
夕食も終わる頃、アキコが急に思い出したように言った。
アキコ「お父さん、このCDダビングして! 今日中に返さなきゃダメなの!(明日になると遅延料金がかかる)」
私「今日は日中いくらでも時間があったのに。何でこんな間際になってから言うんだよ! それに話の続きをしてからね。(アキコ不満そう)じゃ、しょうがない。すぐにやってやるか。」
夕食時の会話を止め、すぐに書斎に移動し、パソコンを起動した。
アキコが早くやってと言わんばかりに隣にいた。
私は、ダビング用のソフトを立ち上げ、アキコが借りてきたCD「天空の城ラピュタ」をパソコンのディスクに挿入した。
読み取りを始めるパソコン。
「やった!」と目を輝かせるアキコ。
私「全く最近のアキコは、ストーブのすぐ前にいて、『テレビを見るときは、2m以上離れて見なさい』と言われても、10秒の手間が嫌でなかなか離れないでぷんぷんしている。お父さんの今やっているのは、その10倍いや100倍手間がかかることなんだ!それも急にやってと言われても、お父さんはやっているんだよ。」
アキコ「(アキコが)かわいいから。」
私「そうだ。そして、かわいいから、アキコの眼が悪くなるといけないと思って、注意してるんだ。(間)今度は、注意されないように離れて見てくれるかい。」
アキコ「うん、そうするよ。」
私「生CDだってただじゃないんだ。お父さんが買っておいたんだよ。」
こんな会話をしている間に、ダビング終了。
アキコ「お父さん、本当にありがとう!」
レンタルショップにCDを返却に行こうとするアキコ。
私「待て。収録曲もスキャナーで読み込んでおく必要がある。」
CDの収録曲などが載っている部分をスキャナーで読み取り完了。
アキコ「お父さん、CDにラベルもお願い。返しに行くから、作っておいてね。」
ラベルマイティでCDのラベルも作り始める私。
アキコは妻と一緒にレンタルショップにCDを返しに行った。
ほどなくCD ラベルは完成。
20分ほどして、アキコがCDを返して、家に帰ってきた。
私「ほら、CD作っておいたぞ。」
アキコ「お父さん、本当にありがとう!」
かくてアキコは、大満足。希望通りダビングしてきれいにラベリングされたCDをただで手に入れたのであった。
その後のアキコ
私「・・今度は、注意されないように離れて見てくれるかい。」
アキコ「うん、そうするよ。」
こういったやりとりがあった日の翌日。
アキコは、私に注意される前にテレビから2m以上離れてテレビを見ていた。
クニコは、そのままストーブのそばにいて、私に注意された。しかし、お姉ちゃんのアキコがちゃんとしているわけだから、クニコは注意されてさっと従った。
この日以来ずっと、アキコは、ストーブの前にいて1m以内からテレビを見るということはなくなった。
お姉ちゃんがしっかりしたので、妹のクニコもよくなった。
なぜアキコは行動を変えたのか
なぜアキコは、「私に注意される前にテレビから2m以上離れてテレビを見る」ように変わったのか。
私に叱られるのが恐いからだろうか。それなら、最初に私に叱責されたときに止めていたはずだ。
ストーブの近くすなわちテレビを近くで見ると、目が悪くなることがわかったからだろうか。言い換えれば、私の考えが正しいことがわかったからであろうか。そんなことは、初めからわかっていたことだ。
ではなぜアキコは変わったのか。
それは、お父さんである私の愛を感じたからだと思う。すなわち、アキコがやってほしいということを、急に頼まれたもかかわらず面倒くさがらずに、きちんとやってあげたこと。それに、初めの注意にも、アキコの眼を悪くしたくないという愛ゆえの注意だということを、アキコは感じたからである。
頼み事を聞いてくれたにせよ、叱責にせよ、その中に親の愛を感じたから、アキコは言うことを聞いたのだと思う。
やっぱり子育てのベースには、親子の信頼関係、愛がなくてはならないと感じた一件であった。